ゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」で、ゲームの中のアイドルキャラクターにボイスを付与するユーザーの投票企画「ボイスアイドルオーディション」の結果が2020年5月21日に発表され、得票1位に「辻野あかり」というキャラクターがランクインし、ボイス付与が決まった。
このアイドルは登場が2018年12月とゲームの中では新参ながら、ネットミームを反映した口調で注目、ゲームのプレイヤーに限らないネットユーザーの注目を集め、ブームを巻き起こしていた。それだけにツイッターの国内トレンドでも、愛称の「あかりんご」が2位に入るなど話題を呼んでいる。
「んご」の由来はりんご?それとも...
200人近いアイドルが登場するアイドルマスターシンデレラガールズだが、すべてのキャラクターに声優が起用されているわけではない。今回のボイスアイドルオーディションは、恒例の人気投票「シンデレラガール総選挙」と並行して行われたもので、上位に入選したキャラクターに声優が採用され、ゲーム中などで「ボイス」が付くことになるというもの。
辻野あかりは18年12月20日にゲームに登場。山形県出身でりんご農家の娘で、地元の山形りんごをPRに熱心という設定が与えられ、髪形もりんごを想起させる。約4年ぶりの新キャラとして、注目を集めた。
ところが、セリフの中で口癖として「んご」を多用しているのである。5ちゃんねる(2ちゃんねる)で使われるいわゆる「なんJ語」の「ンゴ」に由来しているのでは、と話題になり、登場当日にはすでに「なんJ語を使うアイドルが現れた」とツイッターのトレンドになっていた。
セリフの中には「んご...都会で流行ってるって、ネットに書いてあったのに。おかしいな?」というものもあり、明言こそされていないが意識してキャラクターが作られたのではと考えられる(ただし、「ンゴ」はなんJを離れ、若い世代の間でも流行語として広まったという経緯があるが)。
「麿」登坂アナやビリー・バンバン菅原進も参戦
登場から1年余りが経った20年1月11日に、ニコニコ動画に「たべるんごのうた」という動画が投稿された。辻野あかりが山形りんごをアピールする内容の歌だが、音声は合成ソフトを利用したいわゆる「ゆっくりボイス」である。
これがブレークすると他のユーザーから関連動画も多数投稿され、実在の楽曲と組み合わせたMAD動画まで次々と生まれている。ネタとして楽曲が採用されたアーティストは宇多田ヒカルさん・ポルノグラフィティ・サカナクション、また「暴れん坊将軍」のテーマやアニメソングなど多岐にわたった。ニコニコ動画の再生数ランキングでは、この「たべるんごのうた」ネタの動画が数カ月にわたり上位に載り続けたほどだ。
さらにネットユーザーだけでなく著名人もこのブームに乗る。通称「麿」の元NHK・現フリーアナウンサーの登坂淳一さんは「たべるんごのうた」を朗読する動画「【読んでみた】たべるんごのうた 辻野あかり【元NHKアナウンサー 登坂淳一の活字三昧】【カバー】」を4月14日にYouTubeチャンネルに投稿。また以前から「アイドルマスター」の楽曲を歌っていたビリー・バンバンの菅原進さんもこの曲を歌唱する動画を4月18日にニコニコ動画に投稿した。
辻野あかりは登場時からネットカルチャーに親和性の高いキャラクターだったが、これらの援護射撃も得票につながったようだ。ニコニコ動画の「たべるんごのうた」にも、結果発表後多くの祝福コメントが寄せられ、「祝勝会」の様相を呈している。
砂塚あきら・夢見りあむ...それぞれの形でネット文化反映
このボイスアイドルオーディションでは2位に砂塚あきらというキャラクターもランクインした。辻野あかりに遅れて19年1月にゲームに実装されたが、趣味でゲーム配信をやっており、タグを付けて自撮りを投稿するのも習慣という、近年のSNS事情を反映したようなアイドルだ。
そして2人の後に19年2月に登場したキャラクターの夢見りあむもまた、メンタルの弱さを自虐的に吐露する台詞があり、またアイドルオタクな設定を与えられ「炎上アイドル」のイメージが生まれた。辻野あかり・砂塚あきら以上にエッジの効いた設定のためか、同年の投票企画「第8回シンデレラガール総選挙」で早くも総合3位にランクインしてボイスを獲得していた。
ネットのトレンドを反映したキャラクター性を帯びて相次いで登場した辻野あかり・砂塚あきら・夢見りあむの3人。ゲーム中やファンの間でも新アイドル組として、トリオを組んで扱われることが多かったこの3人が、トレンドを作り出してきたユーザーの格好の話題になって今回の企画で全員のボイス付与にまで至った。
ともあれ、辻野あかりのボイス獲得で「~んご」のセリフが後日実際に声優により表現されることが決まったが、架空のキャラクターとはいえなんJが発祥のネットスラングを話すアイドルが出現するに至ったわけで、セリフを聞いた際にネット民がどんな反応を見せるかも気になるところだ。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)