感染リスク、大会運営費、世間の声... 夏の甲子園が無観客開催も出来なかった理由

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   日本高野連は2020年5月20日、今夏に甲子園で開幕を予定していた第102回全国高校野球選手権を中止することを発表した。

   高野連はこの日、オンライン会議方式で運営委員会を実施し、選手権大会の中止を決めた。新型コロナウイルスの影響を受け、選手らの安全、健康面を考慮して苦渋の決断を下した。夏の選手権大会が中止となったのは米騒動による1918年と第2次世界大戦で中断した41年に次いで3度目となる。

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高校総体は移動や宿泊時の感染リスクで中止決定

   新型コロナウイルスの影響により、春の選抜大会に続いて夏の選手権大会も中止に追いやられた。3月11日に春の選抜大会の中止が決定し、出場を決めていた32の代表校が涙を飲んだ。ウイルス感染の収束を待ちながら全国の高校球児が夏の選手権大会に望みを託したが、全国最多の感染者を出している東京では4月上旬から中旬にかけて感染者数が急増し、先の見えない状況が続いていた。

   このような状況を踏まえ、今夏に予定されていた全国高校総体体育大会(インターハイ)は4月26日に中止を決定。高校総体が中止となったのは1963年に第1回大会が開催されてから初めてで、全国高体連の岡田正治会長は「競技中だけでなく、移動や宿泊時の感染リスクも大きい」と中止に至った理由を説明。高体連が高校総体の中止を決めたことで、同じく高校の部活動の延長線上にある選手権大会の行方に注目が集まっていた。

   今回、夏の選手権大会が中止となった大きな要因は地方大会のスケジュールにある。当初の予定通り8月10日に開幕することを想定すれば、少なくとも7月中旬までに全国の地方大会が開催されなければ間に合わない状況にあった。政府が5月14日に緊急事態宣言を39県で解除したものの、東京など地域によっては感染のリスクが十分には軽減しておらず、地方大会開催へ向けて47都道府県の足並みをそろえることは現実的ではなかった。

無観客開催なら巨額赤字も...

   大会の運営面に関しても厳しいものがあった。高野連は無観客開催も検討していたが、無観客で開催した場合、巨額の赤字が出る可能性があった。大会主催者の朝日新聞が発表している2019年の第101回大会の収支決算によると、6億5907万426円の収入に対して、支出は4億4415円9967円となっており、2億1491円459円の剰余金が出ている。主な収入源はチケット収入で、無観客で開催されれば巨額の支出を補填するだけの収入が見込めない状況にあった。

   また、少なからず「世間の声」も中止を決定する要因になっただろう。高校スポーツの頂点を決める高校総体が中止となり、夏の選手権大会が開催されれば「なぜ高校野球だけ」との声も上がりそうだ。高校スポーツではけた外れの集客力を持ち、多大な入場料収入が見込める優良コンテンツだが、選手は高校総体を目指す生徒と同じ高校生だ。多くの高校生が部活動を制限されるなか、高校野球が特別扱いされれば世間からの批判は避けられなかっただろう。

   夏の選手権大会が中止になったことで、高校野球の日本一を決める大会が消滅した。その一方でウイルスの感染者が少ない地域では、球児のために「最後の夏」を用意しようとする動きがある。愛知県高野連はこの日、選手権大会の中止を受け、県独自の公式戦開催へ向けて準備を進めていくことを公式サイトで発表。愛知の他にも各地で同様な動きがみられ、春夏連続で希望を絶たれた球児にとってはせめてもの救いとなりそうだ。

   この日、オンライン会見で大会の中止を発表した大会会長の朝日新聞社・渡辺雅隆社長は「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、選手や関係者、お客様の安全と健康を守るために6月下旬から8月はじめにかけて予定していた49の地方大会、8月10日に阪神甲子園球場で開幕を予定していた全国大会を中止せざるをえませんでした」と説明。高野連の八田英二会長は「まさしく断腸の思いです」と胸の内を明かした。

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