NECの業績が好調だ。2020年5月12日に発表した20年3月期連結決算(国際会計基準)の純利益は23年ぶりに過去最高を更新。21年3月期の連結営業利益は前の期より17.5%増えると見込む。
今後については新型コロナウイルスの感染拡大のもと、テレワークなどの「新しい日常(ニューノーマル)」で活躍の余地があることが大きい。ただ、需要はあっても顧客企業の経営悪化でIT投資が鈍ればその影響は免れないともみられている。
オンラインの教育、診察も
2020年3月期の売上高は前期比6.2%増の3兆952億円、営業利益は2.2倍の1276億円、純利益は2.5倍の999億円に上った。売上高は中期計画に掲げる「2021年3月期に3兆円」の目標を1年前倒しで達成した。ウィンドウズ7のサポート終了に伴う企業のパソコン更新需要を取り込み、企業向けハードウェアが増加。また、「フィンテック」に取り組む金融機関のIT投資意欲も旺盛で、その受注も増えた。秘めた実力を持つ航空宇宙・防衛向けのビジネスも順調だった。
NECは選択と集中、リストラを経て、かつてのようにソニーやパナソニックなどとともに「日本の大手電機メーカー」とひとくくりにできない時代となっている。現状、官公庁や大手企業のIT投資にこたえることと通信事業者向けのビジネスが主力事業だ。日本経済新聞は先日、NECと富士通、それにNTTデータを「IT(情報技術)3社」と称してその決算内容を解説していた。どちらかというと「電電公社の長男、次男」(長男がNEC、次男が富士通)と呼ばれた、通信機器とそのソフトが主力だった時代に近いのかもしれない。実際、次世代通信規格「5G」関連が今後の成長を支えるとみられている。
そうしたNECの法人向けビジネスは、コロナ禍のもとで大きな役割を果たす可能性がある。テレワークで必要となる環境の整備、セキュリティ対策、さらに一般からの問い合わせへのAIチャットボット(自動会話プログラム)対応も市場拡大を見込める。オンライン教育、小中学校へのパソコン配備強化、遠隔オンライン診察が進むことも追い風となろう。また、NECはマスクを外さなくても本人確認を可能とする「マスク対応顔認証システム」を開発し2020年3月に本社ビルに導入済みで、21年3月期上期に製品化する方針だ。
予断を許さない受注獲得
NECが2020年3月期連結決算と同時に発表した21年3月期連結決算の業績予想は、売上高が前期比2.1%減の3兆300億円、営業利益が17.5%増の1500億円、純利益が10.0%減の900億円となっている。売上高は映像ソリューション事業の非連結化とパソコン特需の反動、純利益は20年3月期に税金費用の一時的減少があったことの反動が影響する。赤字の海外事業をリストラすることが営業利益の増加に貢献するようだ。年間配当は10円増の80円を予想した。
これらを株式市場は好感し、5月13日には一時前日終値比6.8%(300円)高の4690円に上昇。14日も続伸し、コロナショックで下げた株価がV字回復したと言える水準に戻った。ただ、NECの法人向けビジネスは当然ながら顧客法人の投資意欲に委ねられる部分が大きい。流通や外食などコロナ禍で厳しい局面にある企業が多いなか、思惑通りに受注を獲得できるかは予断を許さないと言えそうだ。