金融機関から行政手続きまで、窓口に出向いたり、書類に記入したりせずともスマートフォンで完結しようとする新サービスが始まる。
2020年6月下旬スタート予定の「AIRPOST(エアポスト)」は、金融と携帯電話業界が連携して、ワンストップで手続きできるようにする試みだ。
将来的には行政手続きも
AIRPOSTを提供するのは、凸版印刷グループのトッパン・フォームズ(東京都港区)。概略図によると、口座振替申込を皮切りに、20年中に住所変更などに対応。eKYC(オンラインでの本人確認)と同等の情報連携も始めるという。また、21年度以降には、災害時・行政での手続きや、マイナンバーカードを利用した政府の「マイナポータル」との連携も計画している。
5月11日の発表に名を連ねた企業は、JCB、東京海上日動火災保険、日本生命保険、野村證券、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行の金融7社と、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯3社。3社が提供する「+(プラス)メッセージ」と連携して、利便性向上・業務効率化を図るという。
発表文によると、日本経団連が同日に公表した提言「Digital Transformation(DX)〜価値の協創で未来をひらく〜」のDX実装プロジェクトの一環として、AIRPOSTが提供されるという。よく意味がわからないので、提言もあわせて読んでみたが、どうやらデジタル技術の進展による社会変革(これをデジタルトランスフォーメーション=DXと表現)を背景に、企業横断で人々の日常を快適にしていくことのようだ。
たしかに、各社の手続きがワンストップで済むなら、それに越したことはない。ただそこまでの過程には、課題もある。もっともネックになりそうなのは、窓口代わりになる「+メッセージ」だ。
利用者数は約1500万人
携帯3社が18年5月に開始した「+メッセージ」は、携帯電話の業界団体「GSMA」による国際規格「RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)」に準拠し、携帯電話番号だけでメッセージがやりとりできるのが特徴だ。19年5月からは、企業とやりとりできる「公式アカウント」も始まったが、SMS(ショート・メッセージ・サービス)との差別化が図れていないのか、利用者数は20年2月時点で約1500万人にとどまる。
電気通信事業者協会の事業者別契約数(2019年度)によると、ドコモが約8032万件、auが約5864万件、ソフトバンク・ワイモバイルが約4318万件で、3キャリアあわせて約1億8215万件。+メッセージ利用者は、その10%にも満たない。
サービス利用には携帯3社への加入が必要で、いわゆる「格安SIM」のユーザーでは利用できない点も、導入障壁を高くしている。月間アクティブユーザー8300万人以上のLINE(19年12月末時点)とは、まだまだ大きな差がある。
ここでポイントとなるのは、AIRPOSTのために、+メッセージを使い始める人が、どの程度出てくるかだ。いかに革新的であっても、ユーザーがいなければ宝の持ち腐れになってしまう。両者はこれから、ある種の運命共同体になりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)