中国、ポスト・コロナでマイカー需要拡大か SARS後の「生産倍増」再来の兆し

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   2020年の中国経済の回復を考えるうえで参考になるのは、2003年に、北京、広東、香港でSARS(重症急性呼吸症候群)の感染が広がった際、バス、地下鉄などの交通機関が敬遠され、自家用車の販売量が感染収束後に増加したことだ。自家用車の生産台数は2002年の324.81万台から2003年の439.08万台に34.2%増加した。

   2020年の新型コロナウイルスによる肺炎が収束した中国では、減少していた自家用車の販売量が、2021年から急増する可能性がある。

  • 北京市内のトヨタの自動車販売店。平日でも下見に来る客が後を絶たない(2020年5月14日、筆者撮影)
    北京市内のトヨタの自動車販売店。平日でも下見に来る客が後を絶たない(2020年5月14日、筆者撮影)
  • 北京市内のトヨタの自動車販売店。平日でも下見に来る客が後を絶たない(2020年5月14日、筆者撮影)

トヨタは4月に前年比増加に転じる

   2020年に中国でコロナウイルスの感染が急拡大しはじめたのは、ちょうど車がもっとも売れる時期と重なっていた。中国では、毎年の春節前後に車がもっとも売れるが、2020年はそうではなかった。1月下旬の春節にはコロナの影響であまり売れず、さらに2月、3月は販売店に行く消費者もめっきり減り、4月になってやっと回復した。

   5月14日の『中国青年報』は、

「今年の4月、自動車の生産量と販売量はそれぞれ210.2万台と207万台だった。先月比では46.6%と42.5%増であり、昨年同期比では2.3%と4.4%増であった。月間の成長率では、今年では初めてのプラスに転じ、販売量の増加は21カ月ぶりのプラスであった」

ともろ手を挙げて歓迎する記事を掲載した。

   日系自動車メーカーも復調しつつある。トヨタは、中国での4月の新車販売台数が14.29万台と、昨年同期比で0.2%増となり、昨年同期比でプラスに転じた。1月から3月まで販売量は減少し続けたが、4月からはアメリカや日本の市場と違い、中国では増加に転じた。

「レクサスは4月に2万3150台売れ、昨年同期比6%増となった。合弁の一汽豊田の販売台数は4月に7万1771台、9%増だったが、広汽豊田は、同6万3607台、47%増となっている」

とトヨタ中国の広報は発表している。

   5月に入ってからも、トヨタの販売量はさらに増加していると筆者はトヨタ販売担当の人から聞いた。

米テスラには600億円の融資

   アメリカのテスラは、2019年に上海に工場を作ったばかりだったが、コロナショックの最中である2020年2月10日から早くも生産を回復し、毎週の生産量は1月25日春節の前を上回って、4000台となっているという。生産規模からみると、中国で年間20万台の生産量になる。

   このテスラに対して、中国の銀行は全力で支援している。5月11日のポータルサイトの新浪ニュースによると、

「テスラは中国工商銀行から40億元(約600億円)の融資をうけて、在中国の事業を急いで展開している」

   中国国産の電気自動車(EV)の価格は、ほぼ30万元(約450万円)だが、今回、融資を受けたテスラは上海で年間20万台のEVを作り、その価格は20万元(約300万円)台に引き下げており、価格面で販売量を拡大していくと思われる。

   EVへの助成金は2020年で終了する予定だったが、コロナショックで延長が決まった。5月14日に湖南省長沙経済技術開発区管理委員会の外資導入担当幹部に会い、自動車産業の促進について話を聞いた。

「長沙では広汽三菱など年間100万台の自動車を生産しています。これからEV生産の産業育成政策に力を入れます」

   冒頭に述べたように、過去にも、中国自動車市場はSARSによって大きく変化した。2002年にはわずか324.81万台の販売量だったが、06年に倍増して721.6万台になり、19年に2576.9万台に達した。

   現在、中国では自動車の販売に対して制限政策を取っている。北京などの大都会では購入が、ナンバープレートの取得が抽選でしかもらえないので、その抽選に当たらなければできない。さらにナンバープレートの番号によって週に一日は使用できない。

   しかし、新型コロナによって個人の自家用車へのニーズは高まっており、中国当局がこうした販売制限を緩和すれば、自家用車は爆発的に売れる可能性がある。

   中国では人気のある日系自動車は、EVなどの新製品の導入を含めて、新型コロナウイルス後の販売増加につながる可能性は大きいと思われる。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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