国内では6月7日から「外資規制」適用されるが...
欧州以外でも、豪州は新型コロナ感染拡大を受け、一定期間は投資額にかかわらず、海外からの全投資案件について、外国投資審査委員会が投資の可否を判断する審査を行うことにした。インドも新たな規制を導入し、「国境を接する国」からインドへの投資に政府の認可が必要とした。モディ政権は外国からの投資を呼び込んで成長を図る政策を進めているが、新型コロナに乗じた買収を阻止したい考えだ。隣国では、イスラム教国であるパキスタン、バングラデシュからの投資は従来から認可制で、今倍の措置は中国を狙いうちにしたのは明らか。これに対し中国は「世界貿易機関(WTO)の無差別原則に反する」と強く反発している。
中国を警戒する米国は2月に対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化し、ベンチャー企業を含め、前端技術や重要インフラ関連企業を中国勢が買収するのを困難にする処置を採用済み。
日本は、新型コロナとは関係なく進めていた外資規制が、ちょうど6月7日に適用される。2019年10月29日にJ-CASTニュース(「外資規制強化 拍手の産経、危惧する日経...<略>」)で解説したが、重要な分野で、海外投資家が1%以上の株式を取得する場合、原則として事前に届け出が義務付けられる(従来は10%以上を規制)。対象は武器、航空機、宇宙、原子力、電力その他のインフラなど12分野、政府はすでに、518社の具体的な企業リストも公表している。新型コロナを受け、医薬品、医療機器分野を規制対象に加える方針も打ち出している。
ただ、規制の強化は、国境を越えたカネの流れを抑え、景気回復の足かせになりかねない。日本の場合、海外からの直接投資の拡大はアベノミクスの成長戦略の重要な柱でもあり、「2020 年に対内直接投資残高 35 兆円」との目標も掲げている(2018年末で30.7兆円)。対日投資は台湾企業に買収されて復活したシャープのように、企業の体質改善に結び付きうる。裏を返せば、市場原理が働かず、効率の悪い企業が温存され、日本経済全体の構造改革を遅らせかねない懸念もある。
トランプ政権の発足を契機にした自国第一主義の台頭に加え、コロナ禍を受けて外資規制の動きが強まる中、単に守りに走るのでなく、いかに経済活性化とバランスをとるか、世界が模索していくことになる。