外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(4) 「自粛」が「萎縮」になってはいないか 今こそ専門家は発信を!

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人間らしく生きること

   議論を引き取る形で岩本さんがこう発言した。

「一番重要なのは、日本国憲法第13条の『すべて国民は、個人として尊重される』という原則だろう。専門家会議は『新しい生活様式』を打ち出したが、それが人間を孤立化させ、管理することにつながるのなら、日本国憲法に対する挑戦になる。どんな時でも、人間らしく生きることを大切にしたい」

   塚本さんがこれに賛同した。

「コロナ対策は国によって違う。ある意味で自由を規制し、感染リスクをアプリで追跡する台湾や韓国もあれば、集団免疫を目指すスウェーデンのような国もある。ウイルス抑制のためなら何をしてもいいというのは、おかしい。岩本先生に同感です」

   会議は予定を超えて2時間に及んだ。ここで概略をご報告したように、話題はあちこちに飛び、散漫と思う方もおられるだろう。

   ただ私にとって、初めてのテレビ会議は新鮮だった。それは、自分が抱いている疑いが、ほかの人も同様だったことに気づいたり、自分が気づかなかった問題を、改めて突きつけられたりすることへの発見だ。

   そんなことは、日常の中にいくらでもある。そう思う方もいらっしゃるだろう。

   そう。コロナ禍の今、それはない。私たちが知らずに失ってしまっていること、話すこと、語らうことの大切さを、私は痛感した。

ジャーナリスト 外岡秀俊




●外岡秀俊プロフィール
そとおか・ひでとし ジャーナリスト、北大公共政策大学院(HOPS)公共政策学研究センター上席研究員
1953年生まれ。東京大学法学部在学中に石川啄木をテーマにした『北帰行』(河出書房新社)で文藝賞を受賞。77年、朝日新聞社に入社、ニューヨーク特派員、編集委員、ヨーロッパ総局長などを経て、東京本社編集局長。同社を退職後は震災報道と沖縄報道を主な守備範囲として取材・執筆活動を展開。『地震と社会』『アジアへ』『傍観者からの手紙』(ともにみすず書房)『3・11複合被災』(岩波新書)、『震災と原発 国家の過ち』(朝日新書)などのジャーナリストとしての著書のほかに、中原清一郎のペンネームで小説『カノン』『人の昏れ方』(ともに河出書房新社)なども発表している。

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