2020年2月中旬には2万9500ドルを超えて最高値を更新したNYダウは、その後に米国本土でも新型コロナウイルスの感染拡大が現実となったために売りが殺到。3月16日(現地時間)には過去最大の下落幅(2997ドル)を記録した。さらに3月23日には一時1万8500ドルを割り、わずか1カ月余りで1万1000ドルを超える「暴落」となった。日経平均株価も約2カ月で8000円近く下落して、3月19日には年初来安値の1万6000円台をつけた。世界の株式市場は、未知のウイルスを前に投資家の不安が増幅した「コロナショック」によって大荒れに荒れた。
世界中で人の移動が制限され、航空需要の「蒸発」が当面続くと見込まれるとして、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社は、保有していた米航空会社の株式をすべて投げ売り、同社は2020年1~3月期だけで497億ドル(5兆3000億円)もの赤字に転落した。従来からの投資家にとっては悪夢のような四半期だったが、別の見方をすれば、割安な銘柄がごろごろしている「買い場」とも言える。そこに目を付け、日本では2月ごろからインターネット証券会社に証券口座を新規開設する個人が急増した。
20代以下と30代の比率が膨らんでいる
楽天証券では2月の新規開設数が約10万6000口座、3月は約16万4000口座に達して、2カ月連続で主要インターネット証券における記録を更新した。3月の開設者の7割を投資の初心者が占めており、年齢層でも20代以下と30代の比率が膨らんでいるという。今回の暴落を機に個人が株取引を始める動きはインターネット証券会社に共通しており、各社の1~3月期の業績を押し上げた。
一方、対面営業をベースとしてきた大手証券会社にとっては、感染拡大で営業の自粛を余儀なくされ、個人向け証券部門は厳しい状況に置かれている。支店などに個人投資家を集めて証券アナリストらが今後の見通しを説明するセミナーの開催を取りやめており、外出自粛要請で営業担当者は顧客訪問も十分にできず、営業活動を大幅に縮小せざるをえなくなっている。個人投資家の中でも富裕層を主要な顧客としてきた大手証券会社は、まとまった資金の運用に際しては対面接客を基本としてきたため、電話やインターネットを介したやり取りに切り替えても従来通りにはできないのが実情だ。
大手証券3社は増益
それでも大手証券5社の2020年3月期連結決算を見ると、最終損益はいずれも黒字を確保している。19年4~12月期の株価復調が追い風になり、野村ホールディングス、SMBC日興證券、みずほ証券の3社は増益だった。19年3月期には買収先の「のれん代」の減損処理で1004億円の最終赤字に落ち込んだ野村ホールディングスは、20年3月期には2169億円の最終黒字に回復した。株価は大荒れだった20年1~3月期には手元資金を確保しようと企業が相次いで社債を発行したため、その発行手数料も大手証券会社の収入になった。
緊急事態宣言が発令されたのは2020年4月7日だったため、3月末までの決算には反映されていない。また、底を打った株価がこのまま回復していくかどうかは、移動規制の解除を始めた先進各国における感染の今後の推移や、感染拡大が続く新興国の動向次第で、不確実性が極めて高い。何とか1~3月期は乗り越えたものの、大手証券会社には綱渡りの経営が続きそうだ。