液体糊(のり)の「アラビックヤマト」と同じ容器にハチミツを入れたコラボ商品「はちみつアラビックリ!?ヤマト」の発売が発表され、インターネット上で今後子どもなどが糊を「誤飲」するリスクが生じないかと懸念する声があがっている。
コラボ商品発売元のヘソプロダクション(本社・大阪市)には、誤飲リスクを指摘するメールも直接届いているという。同社の稲本実代表は取材に対し、開発段階で検討課題にあがっていたとして、誤飲防止シールと注意書き文書という2つの対策をとっていると明かした。
「この商品は蜂蜜です。接着はできません」
ヘソプロダクションは2020年5月11日に「はちみつアラビックリ!?ヤマト」をプレスリリース。同商品は、糊のアラビックヤマトの製造販売元であるヤマト(本社・東京都中央区)と正規ライセンス契約を結んでヘソプロダクションが企画製造している。
最大の特徴はロングセラーのアラビックヤマトと同じ容器を使い、中身をハチミツにした点。リリースによると、外見の色味や質感は液体糊にそっくりという外見ながら、手を汚さずムラなく塗れる機能性も併せ持つという。ラベルもアラビックヤマトとほぼ同じだが、「はちみつ」「蜂蜜」「HONEY」といったことを明記。また、「この商品は蜂蜜です。接着はできません」「容器は食品用に衛生処理されておりますので市販のアラビックヤマトの容器は使用できません」とも書かれている。
価格は800円(税抜)で、軽減税率の対象。13日にウェブで先行発売し、6月上旬から全国の駅構内店舗などで一般発売する。
ヤマトも今回のコラボ商品について11日、「当社は容器協力をさせていただいておりますが、商品は、(株)ヘソプロダクションさまの商品となりますので商品に関するお問い合わせは(株)ヘソプロダクションさまへお願いします」と発表。「容器は食品用に衛生処理されております。市販の『アラビックヤマト』の容器は使用できませんのでご理解ください。尚、市販の『アラビックヤマト』は接着の用途としてご利用くださいますよう重ねてお願いします」とヘソプロダクションと同様の注意喚起をしている。
ユニークな商品だが、ツイッター上では「子供が間違えて食べそうで怖い」「メーカーの人間に安全工学とかやった人間いないんだろうな」「食べ物かそうでないかを自分で判断できない人が居るご家庭では取り扱いに細心の注意が必要だ...」など、糊のアラビックヤマトを誤飲するリスクが発生しないかと指摘する声があがった。ただ「舐めてはいけない家族がいる人はそもそも買わない」「間違えるとしたら、のりと間違えて紙に塗る位です」と諫めるような声もある。
指摘受け「注意書き」の対策を用意
発売したヘソプロダクションの稲本実代表は13日、J-CASTニュースの取材に「誤飲のリスクに関する意見は開発段階でもありました」とし、2つの対策をとっていることを明かした。
1つは、容器に貼る誤飲防止用の2種のシール。「これはハチミツです。食べられます」などと書かれ、ハチのマークを描いた「はちみつアラビックリ!?ヤマト」に貼るためのシールと、「食べられません」と書かれ、口に入れられないことを表すバッテンのイラストを描いた糊の「アラビックヤマト」に貼るためのシールだ。稲本氏は「ヤマト様の商品であるアラビックヤマト用のシールまで弊社が用意するのは違うと思っていたのですが、できる限りケアすべきと思い、2種類用意しました。そのままのデザインを楽しみたい方もいると思いますので、最初から貼った状態ではなく、後から貼れるようにしています」と話す。
もう1つは、別紙での注意書き。糊は食べられないことや、「お子様がいるご家庭では商品管理をしていただくように」といったことを書いているという。シールのほうは当初から商品に同梱することを決めていたが、注意書きのほうは発表後の指摘を受けて追加の対策としてとることにした。
稲本氏は「大事なのは、商品をその役割どおりに使っていただくことだと思います」とした上で、「弁護士にも相談してリスク管理をしています。リスクをゼロにするのは難しいのですが、さまざまなことを想定しながら、できる限りのことをしようと思いました。新商品のハチミツを買っていただかなくても、アラビックヤマトをお持ちのご家庭で今後もし誤飲が不安だという方がいれば、シールを無料送付させていただくことも検討しています」と話している。
そもそもなぜアラビックヤマトの容器にハチミツを入れて商品化しようと考えたのか。それは「シンプルに、私の中でアラビックヤマトの糊がハチミツのように見えていたからです。弊社では過去にもマジックの(編注:ペン型)ふりかけを作るなどしており、アラビックヤマトの容器にハチミツが入っていたらユニークな商品になると思いました」と稲本氏。面白さだけでなく、「スポンジの形状や糊の出方は、ハチミツを入れたら機能面でも使いやすいだろうと思っており、実際に開発時の試験でも綺麗にハチミツが出ました」としている。
ヤマト「永年ご愛顧いただいているロングセラー商品だからこそ」
コラボ企画はヘソプロダクションがヤマトに提案し、承諾を得たという。「もともと文具メーカーは誤飲・誤食の問題を常に抱えているということで、ヤマト様は今回の商品化を慎重に協議されていました。『はちみつアラビックリ!?ヤマト』自体は、(ヤマトではなく)弊社が発売元として責任をもっています」と稲本氏は話している。
ヤマトは14日の取材に対し、誤飲リスクについて次のとおり見解を示した。
「当社商品はあくまで文具なので、容器は同じでも文具と食品ですので、お客様には、誤解のないようご理解いただいてご利用いただければと思います。以前から、『保管場所はお子様の手の届かないところに置いてください。また、接着以外には使用しないでください。』とお願いして誤飲のリスクを軽減する様に努めています」
ヘソプロダクションからはハチミツの商品を作ることで提案を受け許諾。ただ、商品化にあたり「食品としての容器利用ですので、本来、当社商品は文具であることからお客様に誤解が生じないか?など、とまどいもあり、この点についてはヘソプロダクション様と様々な視点でご協議させて頂きました」とやはり検討を重ねたという。その上で、安全性に関する対策と、コラボに込めた思いを次のように明かしている。
「先方へは、パッケージや頒布物、提供情報には、はちみつであることを明確に分かりやすく表示及び、告知いただくよう重ねてお願いさせて頂きました。尚、容器の衛生処理は、ヘソプロダクションさんで対応いただいている他、容器の衛生面対応への記載も、誤解が起きないようきちんとお伝えいただくことでお客様への理解をはかっていただくようお願いしました。また、当社としてきちんと情報をお伝えしていくことも大事なことですので、重ねて弊社HPにて情報掲載をしました。
永年ご愛顧いただいているロングセラー商品だからこそコラボによって、文具とは違ったシーンでお客様に楽しんでいただけることも一つだと思いますので、この度ご協力させていただきました」
(J-CASTニュース編集部 青木正典)