大学の「PCR検査機器数」調査開始に「今ごろなぜ?」 文科・厚労両省に聞いた

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   PCR検査に使う機器を各大学がいくつ持っているか文科省が調査を始め、「今ごろなぜ?」と研究者らからツイッター上で疑問の声が続出している。

   厚労省との縦割り行政説など、様々な憶測も流れている。3か月ほど前には、その必要を訴える声も出ていたが、今になって調査を始めた理由を文科省や厚労省に聞いた。

  • 萩生田光一文科相の答弁がきっかけ?(衆院インターネット審議中継から)
    萩生田光一文科相の答弁がきっかけ?(衆院インターネット審議中継から)
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安倍首相が、山中教授との対談で「活用したい」と明言

「政府が本気出したみたいです」「びっくりする程遅いですね」「初動でやらずして、何の効果が??」...

   ツイッター上では、2020年5月12日から、大学の研究者らからこんな声が続々上がるようになった。

   それらによると、「各大学等におけるPCR機器の保有状況等について(調査)」とのタイトルで、文科省から12日午前0時台に各大学に送信されていた。前日の11日付の調査依頼になっており、14日までに回答を求めるという急な連絡だ。内容は、大学病院以外のPCR機器の保有状況について知りたいとなっている。

   PCR機器については、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が6日、安倍晋三首相とともに出演したニコニコ生放送の番組で、自身の研究所で新型コロナウイルスのPCR検査をできる機器が30台ぐらいあると明かし、大学の研究室を利用すれば検査を拡充できると提案していた。検査能力は、政府が掲げる1日2万件を超えて、10万件ぐらいできるはずだという。これに対し、安倍首相も、「ぜひそういう調整もさせていただきたい。活用したい」と前向きな姿勢を見せていた。

   このやり取りは、国会でも取り上げられ、11日の衆院予算委員会では、立憲民主党の川内博史氏が安倍首相も活用したいとしたとして、10万件に向けた体制についてただした。

文科相の答弁直後だが、「準備してきてこのタイミングになった」

   これに対し、安倍首相は、2万件体制に向けて大学の一部ですでに実施しており、さらに協力を拡大したいと答えた。萩生田光一文科相は、「個々の研究室にいくつ何台あるかというのは、詳細を我々把握していなくて、調査をしているところでございます」などと説明していた。

   ツイッター上では、文科省は、これらの答弁を受けて慌てて、その日の深夜に調査依頼を各大学に出したのではないかとの指摘が出ている。

   文科省の高等教育企画課は5月13日、J-CASTニュースの取材に対し、国会答弁との関係をこう説明した。

「答弁があったからというよりも、以前から厚労省に協力しようと準備を進めてきて、このタイミングで調査依頼になったということです。大学病院でしっかり検査体制を組んで、大学の研究所や独立行政法人の状況は把握していました。昨今の状況を受けて、検査体制を拡大しようと、各大学の能力を調べることを検討していました。厚労省が地域のニーズに合わせて、全体的な調整をしており、情報交換をする中で話がまとまりました」

   大学の研究室にまで拡大するには、クリアしなければならないことも多かったという。

厚労省「使い道があまりなく、数を把握すべきほどではない」

「大学病院以外は、都道府県の衛生研究所への登録が必要で、衛生検査場にするのは難しかったことがあります。3月5日の省令で規定が緩和され、医師の管理者が不要になりました。それでも、遺伝子ではなくウイルスを増幅しますので、感染症の予防が必要など一定の基準があります。各大学に対しては、DNAでなくRNAを増幅する特殊なリアルタイムPCR法の機器があるか、別の感染症研究をストップさせて検査するだけの余力が各大学にあるか、数十台ほどある全自動のPCR機器の一部を使えるのか、を含めて調査しています」

   一方、厚労省の結核感染症課は、取材に対し、こう答えた。

「通知など正式な依頼はしておらず、文科省が調査をかけた方がいいと自主的に情報を集めているのでは。以前から話はあって、文科省などとコミュニケーションは取ってきましたが、機器の数を調べることにどのぐらいの意義があるかとのこともあって、お願いしていた話ではありません。人の検体を扱うために研究室の整備などが必要で、ポテンシャルとして使い道があまりなく、数を把握すべきほどではないと考えています」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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