新型コロナウイルス感染症による東京都の死者数について、厚生労働省が集計方法を変更し、「19人」が翌日には「171人」と、都の公式サイトで公表している数値にそろえ、結果として「大幅修正」したことをめぐり、衆院予算委員会で質疑があった。
答弁に立った加藤勝信厚労相は、「いつの、どういうことですか?」などと応じてかみ合わず、質問した国民民主党の玉木雄一郎代表は「(緊急事態宣言の解除判断などでデータが重要になるなか、)ご存じない?」「ちょっと大丈夫ですか」と担当大臣の姿勢に疑問を呈していた。
西村担当相は「聞いておりました」
2020年5月11日の衆院予算委で玉木氏は、新型コロナ感染症による東京都の死者数に関連した質問を行った。厚労省公表の数字が「都のホームページ」の数字と違うので、都発表の数字に合わせる形で「19人から171人に修正した」と報道されていたと指摘し、「これ事実ですか」と尋ねた。
これに対し、加藤厚労相は「これ、と...(報道を)見てないんで、どれなのか分かりませんが、都道府県から聞いた数字をベースに計上している」と答えた。
玉木氏が「19人から171人に修正された事実をご存じない、ということですね」、と続けると、加藤氏は「いつの、どういう事ですか?」と応じ、話がかみ合わない。玉木氏は「驚きましたね」と感想をもらし、「先週末」に大きく報道されたと指摘。さらに、新型コロナ対策担当大臣の西村康稔氏にも見解を聞いた。
西村氏は「先週の段階で厚労省から、東京都の数字について正確ではなかったものがあるから、きちんと取れてなかったものがあるから、しっかり報告します、と聞いておりました。その後、一部が修正された。正確な数字は今覚えておりませんが(略)」と説明した。
一方の玉木氏は「ちょっと大丈夫ですか?」と疑問を投げかけ、さらに加藤大臣らも集計方法変更で「どうなったか」を「ご存じなかった」として、緊急事態宣言の解除判断などの際には様々な指標の数字が重要になることを強調し、「国家の判断は大丈夫ですか」と指摘した。
「各都道府県ウェブサイト上に公表されているデータ等に基づく数値」
厚労省は9日発表分から、各都道府県別の数字のとりまとめについて、「各都道府県ウェブサイト上に公表されているデータ等に基づく数値」と明記し、集計方法を変更した。従来は都道府県からの報告をまとめていたが、詳しい報告が滞ることもあったようだ。ANN(テレビ朝日系)サイトが、東京都の死者数の「大幅修正」などに触れつつ10日未明に報じるなどしていた。
実際に厚労省サイトで日ごとの発表数値を確認すると、東京都の死者数は、8日発表分(8日12時時点)では「19人」となっていたが、9日発表分(8日24時時点)で「171人」に「急増」し、都発表の数字と同じになった。ただ、全国の死者数全体が「急増」したわけではなく、8日発表分では全体の死者数のうち「154人」については、「個々の陽性者との突合作業中のため、本表(都道府県別一覧表)には含めていない」と注意書きがあり、直近では従来から同様の記載(除外人数には変動あり)があった。
一方で9日発表分以降は、こうした表記は消えている。単純計算する範囲では、従来の「突合作業中のため除外」されていた数字が解消され、その分、東京都の数字が「急増」し、全体死者数と都道府県別死者数の合計が基本的に一致するようになったようだ。また、確認できた範囲では、厚労省の6日発表分は一覧表では東京都の死者数は「19人」となっているが、注意書き部分では、「東京都のHPによると、死者数150人となっている」と指摘していた。
厚労省の集計方法変更に伴う他の数値では、感染者数はさほど変わらないものの、退院や自宅療養を終えた人などの数は、9日発表分時点で前日から約1500人増えた。
いずれにせよ、データ変更について、国会審議で詳しい説明を聞くことができなかったことについて、ツイッターでは、「大丈夫なのか」「(大臣が)知らないとは衝撃的だな」といった反応が出ていた。質問を終えた玉木氏も、この問題に関してツイッターを投稿して「(略)科学的根拠に基づいて緊急事態宣言解除を判断するときなのに基礎的データさえ正しく政権中枢に上がっていない現状は驚くべき事態だ」と、あらためて指摘していた。