「中国起源説」に怒る国営新華社通信 海外報道へ「リアリティー・チェック」で反論

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   新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)をめぐり、情報戦も活発しつつある。とりわけ中国が神経をとがらせているが、米国のトランプ大統領が口にした「中国ウイルス」といった名称や新型コロナが「中国起源」だとする説だ。

   その一環として国営新華社通信は、「リアリティー・チェック」をうたう記事を配信。中国をめぐる批判に根拠や資料をまじえながら反論する内容で、世界中で広がるファクトチェックの手法をまねたとみられる。ただ、国際的なファクトチェック団体では、ファクトチェックには「非党派性と公正性」などが求められるとしており、今回の「リアリティー・チェック」とは距離がありそうだ。

  • 中国外務省の華春瑩副報道局長のツイート。「COVID-19に関する24の嘘と事実」という1文とともに、「リアリティー・チェック」をうたう新華社通信の記事を紹介した。
    中国外務省の華春瑩副報道局長のツイート。「COVID-19に関する24の嘘と事実」という1文とともに、「リアリティー・チェック」をうたう新華社通信の記事を紹介した。
  • 中国外務省の華春瑩副報道局長のツイート。「COVID-19に関する24の嘘と事実」という1文とともに、「リアリティー・チェック」をうたう新華社通信の記事を紹介した。

米メディアが「中国に責任転嫁するために、ある種のとんでもない疑惑や嘘を捏造」

   新華社通信の記事は、「COVID-19について米国が中国に対して行った主張のリアリティー・チェック」と題して2020年5月10日に英語で掲載。新型コロナウイルスをめぐる24の論点について中国側が反論する内容だ。ほどなくして中国外務省の華春瑩報道局長もツイッターで、「COVID-19に関する24の嘘と事実」という1行とともに、記事の概要をまとめた画像つきで記事へのリンクを紹介した。

   記事ではまず、自らが「真実」を報じる意義を

「最近、一部の米国メディアは、COVID-19への不十分な対応について中国に責任転嫁するために、ある種のとんでもない疑惑や嘘を捏造している。しかし、リンカーンが言ったように『すべての人を一時的に、そして一部の人たちを常にだますことはできるが、すべての人たちを常にだますことはできない』。嘘は真実の光の中で蒸発する。事実に語らせる時が来た。今後も、新たな嘘が出てきたときには、真実を世界に知らせていく」

などと主張した。

3つは出典付きで反論したが...

   真っ先に「検証」の対象にしたのが、

「COVID-19は『中国ウイルス』または『武漢ウイルスだ』」

という主張(言説)だ。「リアリティー・チェック」の結果では、4つの根拠をつけて

「WHOは、病気の命名に特定の国や場所を関連付けるべきではないことを明確にしている」

と主張した。根拠の内容は、大きく(1)2012年に中東呼吸器症候群(MERS)が流行した際は、その名称が中東地域に悪影響を与えたため、WHO(世界保健機関)などがガイドラインを策定し、病気の名前に場所、人、動物、食物、文化、人口、産業、職業の名前をつけることは避けるべきだとされている(2)WHOは20年2月、新型コロナウイルスによる肺炎を「COVID-19」と命名した(3)20年4月には英ネイチャー誌がCOVID-19を武漢や中国と関連付けたとして社説で謝罪した、といったもの。その出典にあたるWHOやネイチャーの記事へのリンクも張った。

国際ファクトチェック団体の綱領では「非党派性と公正性」求めている

   ただ、4つめの「根拠」は、

「ニューヨーク・タイムズ、ABC、BBCやその他の西側主要メディアのすべてが、アジアのコミュニティーとCOVID-19の誤ったつながりを報じ、深刻な外国人恐怖症を煽り、米国のこれらのコミュニティーに対する人種差別や嫌がらせを頻繁に引き起こした」

というもの。中国側が問題視する具体的な記事の内容や、記事内容とアジアコミュニティーへの嫌がらせへの因果関係への言及はない。

   それ以外にも、

「中国はCOVID-19に関する偽情報を拡散している」

という主張には、

「中国はこれまでずっと開かれて透明な情報公開をしてきた。それどころか、中国に敵対する一部の米国の政治家、学者、メディアは中国を中傷し、攻撃し続けている。中国は偽情報の被害者だ」

と反論し、

「中国は台湾のWHO加盟を阻止し、台湾の人々の健康を危険にさらしている」

という議論には、

「台湾は中国の一部であり、WHOに加盟する権利はない。WHO加盟には主権国家であることが必要だ。中国の台湾とWHOの間の技術協力のチャンネルは、妨げられない」

と主張した。

   ファクトチェックには様々な形があるが、最も厳格だと考えられているファクトチェックの定義は、「国際ファクトチェッキングネットワーク(IFCN)」の綱領によるものだ。綱領では、(1)非党派性と公正性(2)情報源の透明性(3)財源・組織の透明性(4)方法論の透明性(5)明確で誠実な訂正、の5つの要件を求めている。新華社の「リアリティー・チェック」は、一部で(2)や(4)を満たそうと試みた形跡はあるものの、依然として5要件からは距離がある。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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