みずほの「意欲」に戸惑う人々
各行の指針や方針は全般的な投融資の基本的考えを示すもので、環境関連でも、石炭火力だけでなく、熱帯雨林などの保護など広範囲にわたる。このうち、石炭火力に限ってみてみると、みずほは、新規の石炭火力建設への資金提供はしない(既に支援表明済みの案件は除く)、当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠であり温室効果ガスの削減を実現するリプレースメント案件は例外とし、約3000億円の投融資残高は2030年度までに半減、2050年度までにゼロにするというもの。CO2の排出量が少ない「超々臨界圧発電方式」など高効率設備への融資に含みを持たせていた表現は削除した。
他方、三井住友は、新設の石炭火力への投融資などの支援は原則行わないとしつつ、「超々臨界圧発電方式」などについて「環境へ配慮した技術」として「慎重に対応を検討する場合がある」と、融資する可能性を残した。
両行について、国際NGO・RAN日本代表部は、みずほには「石炭に関する方針で例外が残る」としつつ、「邦銀で最も厳しいESG方針」と評価。三井住友には「日本での気候変動対策のリーダーになる大きな機会を逃した」と失望を表明した。
実は、みずほの意欲的な方針転換は各方面に大きなショックを与えた。みずほの前身の日本興業銀行といえば、長期融資や社債の引き受けを通じて戦後の高度成長を、特に電力などインフラ整備の面で支えてきた。石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年の電源構成でも26%程度としている政府は「残高ゼロ方針」に戸惑いを隠せない。
そして、関係者が次に注視するのが三菱UFJだ。2019年5月に示した方針は「新設の石炭火力発電所へのファイナンスは、原則として実行しません」としつつ、高効率発電などの「採用を支持します」と明言していた。三菱UFJは近く、新たな方針を示すとの見方が強く、みずほ並みか、三井住友並みか、その判断が注目される。