日本のメガバンクが、石炭火力発電への融資から手を引く方向を相次いで打ち出している。
温暖化の大きな原因として国際的にやり玉にあがる石炭火力について、海外の大手金融機関が相次いで融資停止などを打ち出す中、3メガもようやくこの流れに乗ることになった。ただ、すでに支援を決めている事業は例外とするなど「抜け道」批判もあり、「脱石炭」がどこまで実効あるものになるかは今後の対応次第といえそうだ。
「足並みがそろった」形だが...
各行は企業の社会的責任という観点から、投融資に関する基本方針や指針を発表し、適宜改定している。その中ではESG(環境=Environment、社会=Social、企業統治=Governance)も大きな柱になっており、その改定が相次いでいる。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は2020年4月15日、新設の石炭火力向けの投融資をやめるとの投融資指針を6月から適用すると発表した。三井住友FGも翌16日、5月から適用する新たな投融資方針を発表し、新設の石炭火力への投融資などは原則行わないとした。
これに先立ち、三菱UFJFGは2019年5月に同様に方針を発表済みで、3メガバンクの足並みがそろった形だ。
こうした動きの背景には、地球温暖化の進展への危機感が高まり、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減を目指すパリ協定を踏まえ、石炭火力への風当たりが強まっていることがある。石炭火力が、最新型でも天然ガス(LNG)の2倍のCO2を排出するからで、国際エネルギー機関(IEA)によると、石炭火力は世界の電力の4割、CO2排出量(エネルギー起源)の3割を占めるだけに、その削減は温暖化対策の重要な柱だ。
石炭火力を資金面で支えているのが世界の巨大金融機関だ。温暖化問題に取り組む国際NGO(非政府組織)「レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)」(本部・米カリフォルニア州)によると、化石燃料に関連する企業向け融資ランキングは、JPモルガン・チェース(649億ドル)、シティ・グループ(524億ドル)、カンク・オブ・アメリカ(480憶ドル)の米大手がトップスリーで、英ウェルズ・ファーゴ、カナダ・ロイヤルが続き、6位に三菱UFJ(322.4億ドル、7位にみずほ(322.0億ドル)が入り、三井住友も202億ドルで18位。
また、ドイツの環境NGOなどによると、発電だけでなく開発、採掘なども含めた石炭事業者への貸し付けは、みずほが2017~2019年で168億ドルと世界最大で、2位は三菱UFJ、3位が三井住友と、上位3位を日本のメガバンクが占める。
強まる金融機関への風当たり
近年、世界の金融機関に世論の風当たりは強まる一方で、世界131の金融機関が2019年9月、融資が、環境や社会にどのような影響を与えているかを自主的に測定し公表していく「国連責任銀行原則(PRB)」が署名。日本から3メガバンクと三井住友トラスト・ホールディングスが加わった。
その具体化ということか、石炭事業への投融資を取りやめる動きが加速している。ゴールドマンサックスなど米大手銀行は2019年末以降、相次いで石炭火力への融資停止を表明。JPモルガン・チェースは、石炭採掘会社や石炭火力プロジェクトへの新規融資を停止し、既存融資も段階的に削減して2024年までにゼロにするという意欲的な方針を打ち出した。トランプ政権がパリ協定から離脱する中での米大手の決断として注目された。世界最大の機関投資家であるブラックロックも年明け1月、運用資産から石炭関連株を手放すと発表しており、環境や構成に配慮するEGS投資が世界の大きなうねりになっている。
邦銀の動きも、こうした世界のトレンドに沿ったものだが、メガバンク各行間に温度差もあり、世界の先端を走るには至っていない。
日本のメディアは「石炭火力 3メガ銀が融資停止」(日経4月15日朝刊)など、十把ひとからげに論じられがちだが、NGOなどはその違いを厳しく見ている。