「感染拡大で物流が滞る」懸念も
農業労働力不足や輸出規制の影響を最も受けるのが食料を自給できない途上国だ。例えばアフリカは、通常でも5人に1人が栄養不足に苦しんでおり、絶対的に食料が不足し、必要量を確保できない恐れがあるうえ、価格の上昇、さらにコロナ禍による自国通貨安と、トリプルパンチになりかねない。折しも、アフリカや中東でバッタの大量発生で農作物が食い荒らされる被害が深刻化している。このままでは食料危機に発展する可能性があり、G20などの主要国はFAOなどと協力して食糧援助などの支援に取り組む必要がある。物流を滞らせないよう、この面でもコロナ感染の拡大を防ぐことが重要なのは言うまでもない。
日本も食料輸入国だが、現時点で途上国のような危機感はない。食料自給率(カロリーベース)は37%(2018年度)と先進国の中でも最低レベル。小麦は88%、大豆は94%、飼料用トウモロコシはほぼ全量を輸入に頼っている。規制が明らかになっている13カ国から日本が輸入している量は少なく、これらの産品の大半は米国、オーストラリア、カナダ、ブラジル産で、例えば食料用小麦粉は2か月分に相当する93万トンの備蓄もある。何より、主食のコメを輸入に頼っていないのは、国民には安心なところだ。
それでも、「穀物の生産国では作っても、感染拡大で物流が滞る事態が起きるかもしれない」(農水省)などの懸念は消えない。また、国内生産では、外国人技能実習生が来日できず、人手不足が深刻化し始めており、他の産業で職を失った人が農業で働きやすいよう、交通費や宿泊費を助成する方針を打ち出したが、実効性は見通せない状況となっている。