米国の2020年4月の雇用統計(速報値、季節調整済み)によると、失業率が14.7%に急上昇した。4月の就業者数も前月から2050万人が減り、過去最大の減少となった。2020年5月9日付の日本経済新聞では、コロナの影響で、日本でも民間企業が余剰人員を抱えていると指摘。多数の「潜在失業者」がいるとする。
ジワジワと忍び寄る大量失業の恐れ。コロナ後、働く人の雇用環境の激変が予想される。
採用予定も大幅減少
総務省が4月28日に発表した3月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整済み)は前月から0.1ポイント悪化し、2.5%だった。完全失業者数は176万人で、前年同月に比べて2万人増えた。
なかでも深刻なのは、宿泊業や飲食サービス業、製造業の雇用が急減していることだ。政府が緊急事態宣言を出した4月以降、各都道府県が外出や店舗営業の自粛を求めたことで、消費や生産に急ブレーキがかかった。1月以降、中国をはじめとするインバウンド需要が見込めなくなったこともある。
新型コロナウイルスの感染拡大で、4月の失業率のさらなる悪化は避けられない見通し。08年9月に起きたリーマン・ショック後の失業者数の増加は約100万人。今回は、リーマン・ショック時に影響が大きかった製造業にとどまらず、サービス業にまで広がっていることが事態をより深刻にしているとされ、失業者が当時を上回る可能性もあるという。
採用をしぼる企業も増えている。企業信用調査の帝国データバンクの「2020年度の雇用動向に関する企業の意識調査」(3月12日発表)では、今年度に正社員の採用予定がある企業は前回調査(19年2月実施)から5.0ポイント減少の59.2%となり、6年ぶりに6割を下回る大幅減。なかでも、非正規社員を採用する予定がある企業は44.2%と6.1ポイントの大幅な減少で、3年ぶりに5割を下回った。
正社員として雇用される人は、かなりしぼられてくるようだ。
コロナ後は「雇用=時間拘束」の考え方が変わる
一方、コロナ禍でつらい思いをしている非正規雇用で働く人は、正社員の道を希望する傾向が強まっている。自動車業界に精通した人材情報サービスのレソリューション(東京都千代田区)が20~40代の非正規雇用で働く男女1154人を対象に、「将来の働き方に不安があるか」聞いたところ、8割超(「非常に不安」34.1%と「不安」43.8%の合計)が「不安がある」と答えた。
さらに、「安定した仕事を得るために必要なことは何だと思いますか」(複数回答可)の問いには、「無期雇用(正社員)での就労」が61.7%と最多。「資格が活かせる仕事」が27.7%、「キャリアアップ・スキルアップに繋がる仕事」が27.4%と続いた。
非正規雇用で働く人からは、
「業績が下がったら、正社員ではない自分が首を切られる」(40代女性、神奈川県)
「いつまで仕事ができるのか、働かせてくれる所があるのか」(40代女性、愛知県)
といった不安の声が寄せられる。
失業者の増加が懸念されるなか、J-CASTニュース会社ウォッチ「社長のお悩み相談室 ~ オレの話を聞いてくれ」を執筆する企業アナリストの大関暁夫氏は、コロナが日本の働き方を大きく変える、「労働階層の近代化が進展する」と指摘する。
これまでの年功序列や終身雇用制といった日本的な働き方とともに、時間による拘束や時給制という、「『雇用=時間拘束』の考え方が変わる大きなターニングポイントになる」とみている。
コロナ後は、
「時間による拘束は工場のライン労働者や宅配便のドライバーなどで働く人のルールとして維持。その一方で、企画立案や営業などの事務系正社員は、時間による拘束ではなく、成果で給与が計られるべきという、ホワイトカラーエグゼンプション的な考え方に収れんされていくのではないかと考えます。
つまり、期待に応えられる成果をあげられる労働者だけがホワイトカラーとして生き残り、それ以外の労働者は拘束時間で契約する単純労働力に移っていくことになり、『労働の階層社会』が明確化されていくのではないでしょうか」
と、大関氏は言う。
正社員だからといって、スキルアップを怠ると生きてはいけない、厳しい時代が待ち受けているようだ。