NTTドコモ、あえて「コロナ影響開示」の深謀遠慮

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   NTTドコモが2021年3月期の業績予想を「現時点で非開示」とする一方、新型コロナウイルスの影響を事業別に開示したことが株式市場でちょっとした話題となっている。コロナの収束の行方など誰も見通せないため非開示とするのが一般的だが、少しでも市場と対話しようとの姿勢も見える。

   思うように出勤できなかったり海外の数字が集まらなかったりするため、3月期決算の東証上場企業のうち、20年4月末までに決算発表を延期、あるいは発表時期未定とした企業は392社と、全体の16%に上る。そうした中でNTTドコモが4月28日、今回の開示を行った。

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「巣ごもり」需要もデータ通信は「微増」見込み

   ドコモが2020年3月期連結決算(国際会計基準)と同時に発表した21年3月期のコロナの影響の事業別開示の内容は、主力の通信事業では、音声通話が「増加」としている。感染拡大を防ぐために人との接触減が求められる中、在宅勤務などの増加によって電話で話す機会が増えるというのだ。

   一方、巣ごもりによって、仕事も遊びもデータ通信が増えそうだが、「微増」にとどまるとみている。自宅でのインターネット利用の増加は想定されるものの、固定通信を家族みんながWi-Fiで使うケースが多く、携帯のデータ通信は伸び悩むという見立てだ。在宅勤務が増えれば当然、通勤時間や昼休みなどの携帯データ通信も減るとみられる。これはドコモにとっては思わぬ逆風と言える現象だ。さらに海外渡航者や国内来訪者の減少によって国際ローミングは「大幅減」を見込んだ。

   また、端末やサービスの販売は「減少」とした。感染拡大防止のため全国のドコモショップなどは営業時間の短縮などを迫られている。そうした中、端末の納入遅れや5Gの設備増強の減速もあいまって端末販売は減らざるを得ないというのだ。ドコモが注力する非通信の「スマートライフ」事業では、「外出自粛や消費の落ち込み」によって金融決済取扱高が「減少」としている。

「費用削減効果」指摘も

   一方、2020年3月期決算は、売上高にあたる営業収益は前期比3.9%減の4兆6512億円、営業利益は15.7%減の8546億円、純利益は10.9%減の5915億円だった。19年6月に始めた「ギガライト」など通信サービスの割安新料金プランが利益を圧迫。端末機器の販売減少も響いた。ドコモの契約者はソフトバンクやKDDIと比べてデータ通信のヘビーユーザーが少なく、新プラン導入が利益を押し下げやすいとされている。「開示」通りにコロナによる巣ごもりによってデータ通信量が伸び悩めば収益への影響は避けられない。

   ただ、野村証券が4月30日配信のリポートで「コロナの影響はあるものの費用削減効果などにより業績回復が続く」との見方を示したように、悲観論が大勢を占めているわけではない。ホテルや居酒屋と違って通信の需要が「蒸発」するわけではないということもあるようだ。この決算発表後初の取引となる4月30日の東京株式市場でドコモの株価が一時前営業日終値比4.7%(155円)安の3140円まで下げたが、期待されていた増配や自社株買いの発表がなかったことへの失望売りだったようだ。「コロナの影響開示」はその反応を見越して投資家をつなぎとめる一策だったのかもしれない。

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