布マスク配布の影響は?
一方で懸念しているのが、粗悪品の流通だ。B社では品質を慎重に見極めて輸入しているといい、逆に品質の差が目立つという。この男性は「マスクの製造をはじめて間もない工場が多いので、品質は度外視されているのが現実と思います」としてこう話す。
「特にメルトブローという不織布は各工場で最も取り合いになっている原材料です。マスクの品質で一番重要なのはフィルターです。ウェブサイトに検査済票を添付しているかどうかは品質担保の1つの判断基準ですが、まったく関係ない規格での検査済票を載せながら『PFE95%以上』などとうたい、品質を良く見せようとする中国工場もあるようですので厄介です。
細かい点ですが、よく見ると左右でゴムの長さが違う商品もあります。ひどい場合は、『3層構造』とうたっているのに、真ん中のフィルターが入っていなくて2層になっていることもあり得ます。切って見てみないと分からないと思います」
B社が取引してきた中国工場では、2月は輸入がほぼストップして見積りも送られてこない工場ばかりだったが、3月下旬ごろから見積りが来るようになり、その後大きく変わったことはない。こうした状況を総合すると、これまでもマスクを作っていた中国工場がここ1か月で増産するようになったわけではなく、これまで製造していなかった中国工場が大量に参入し、その商品が日本に入ってきているとみられるという。男性は「品質は別にして、数量自体はだいぶ出増えてきましたよね」と話している。
もう1つ気になるのは、布マスクが国内のマスク供給に与えた影響だ。マスク配布の効果で流通量や市場価格が落ち着いてきた事実や実感は、マスク輸入を手がける企業にあるのだろうか。前出A社の男性は、
「事実とは異なると思いますし、実感はありません。アベノマスクの効果で価格下落したのではなく、先ほど述べたようなマスク(=『安かろう悪かろう』の商品)が流入している為、価格が下落したと考えています」
との見解。前出B社の男性も、
「実感はないですね全然。布マスク、配られていませんよね。先ほどのとおり、中国のいろんな工場でマスクを生産しているから、供給量が莫大になっているだけだと思います」
と話していた。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)