幼児をあやす米軍兵士写真にこめられた本心
岡崎さんは、こう語る。
「正直に言って、岡本さんにはビジュアル面を期待したのです。非常に美しい水中写真をメインに200文字くらいのキャプションをつける。どこで撮ったかとか、どんな魚だとかのエピソードを......。すると、岡本さんはこう言いました。『ただ、写真を載せるだけなんて月並みだ!』。ギクッとしました。ああ、岡本さんのパワーにスイッチが入ってしまったと。岡本さんという人は、本気になると、ステージが一気に上がる人なのです」
岡本さんは、「小説を書きたい!」と言ったのだった。「ジョージ」役になる巨大魚ナポレオンフィッシュの写真も自分で用意した。岡崎さんが続ける。
「岡本さんは子どものような心を持った人です。『日本のアンデルセン』と呼ばれ、『赤い蝋燭(ろうそく)人形』や『野薔薇(ばら)』などの作品がある小川未明の童話が大好きだと言っていました。岡本さんについては、沖縄とか集団自衛権の問題とか、よく『右だ』『左だ』と言われています。私自身は、岡本さんはそんな見方を超越した場所にいた人だと思っていますが、本人は少し気にされていたようです」
岡崎さんは事務所を訪問した時、岡本さんはパソコン上に自分が写したという写真を見せてくれた。
「君は僕と同じ考え方ではないと思いますが、これがアメリカ軍の本当の姿です」
と言ってパソコン画面に表れたのは、中東の紛争地で幼い子をあやしている米軍兵士の写真だった。
「こういう言い方は失礼かもしれませんが、純粋無垢というか、子どもみたいに素直にものを見る人だったと思いますよ」
と、岡崎さんは振り返った。
(福田和郎)
(追記)岡本さんの未掲載分の遺稿については、遺族の意向もあり、今後も「Web新小説」上で連載される。