岡本行夫さんはピュアな小説を書き遺していた 巨大魚と老ダイバーの、愛と冒険の物語

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女性誌「ミセス」のファッション写真がきっかけ

   それにしても、なぜこんなにもピュアな小説を岡本さんが書くようになったのか。春陽堂書店の顧問、岡崎成美さんに取材すると、そもそもの出会いは26年前の1994年、岡崎さんが女性誌「ミセス」(文化出版局)の編集部にいた頃だ。最初は岡本さんのファッションに惹かれたという。

「岡本さんはとにかくカッコいい。そこで、フォーマルとカジュアルの両方のモデルになってもらい、3ページの特集をしました。女性誌なのでインタビューも政治や外交の話ではなく、個人的な趣味の話を聞くと、『とにかく海が大好きだ』とキレイな写真をたくさん見せてもらいました。また、話題が豊富でとても面白い。そこで、エッセーも連載させていただくことになったのです」

   エッセーのタイトルは「地球をゆく」。1995年から1年間続いた。

「海外で税関を早く通過したい時は、体が大きい人の後ろに並ぶとなぜか早く進むとか、テレビ局のチームと一緒に海外取材に出かけた時の珍道中とか、楽しい話題がいっぱい、文章も軽妙で読者に人気でした」

   岡崎さんは文化出版局を定年退職。春陽堂書店の仕事をするようになると、「Web新小説」の企画が持ち上がっていた。春陽堂書店は創業明治11年(1978年)、かつて文芸雑誌「新小説」などを通じ尾崎紅葉、泉鏡花、夏目漱石、田山花袋、森鴎外らの作品を世に送り出した老舗出版社だ。

   それを現代に蘇らせようというわけだが、もう紙の時代ではない。そこで、「Web新小説」として、谷川俊太郎さん、町田康さん、黛まどかさん、伊藤比呂美さん、大澤麻衣さんらのラインナップをそろえた。

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