全部「コロナ禍」で済む楽なワード
すぐにわかるのは、どうしても長くなることだ(これはあくまで丁寧に付けているので、普段はもうちょっと省略する)。一般的に、あまり見出しは長くしたくない。ネットニュースでもそうだし、紙メディアの場合は特にそう。「短い」言葉はそれだけで強い。
さらに――これが最大のポイントなのだが、上の言い換えからも見て取れるように、「コロナ禍」という言葉には、幅広いニュアンスを含ませることができる。「ウイルス/病気そのもの」「感染拡大という事象」「感染拡大が個人/社会にもたらす負の影響」「感染拡大が続く社会状況」――全部、「コロナ禍」で済んでしまうのだ。
要するに、言葉を選ぶ側からすれば「楽」なのである。弱点である「なじみのなさ」「読みにくさ」も、認知度さえ高まってしまえば問題ない。
こうして、当初は様子見をしていたメディアも「コロナ禍」を採用し、そしてますます一般にも知られるようになり、さらに「右に倣え」で言葉が広がっていく――。
言葉としての「コロナ禍」は、こうやって拡散したのだろう。