「脱はんこ」に大きな追い風 それでも「様子見」が根強い理由

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   新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、自宅などで勤務するテレワークが普及する中、日本独特の「はんこ文化」を見直そうという動きが急速に広がってきた。「ステイホーム」が国ぐるみのかけ声になっているにもかかわらず、決裁に押印が必要だとしてわざわざ出社する人が絶えないためだ。印鑑廃止は実現するのだろうか。

   「全くナンセンスで、美術品として残せばいいだけだ」。政府の経済財政諮問会議の民間議員を務める中西宏明・経団連会長は2020年4月末の記者会見でこう述べ、印鑑に頼る文化がデジタル社会に合わない、と批判した。

  • このために出社しました。(写真はイメージ)
    このために出社しました。(写真はイメージ)
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押印のために出社

   厚生労働省が実施したアンケート調査によると、政府が東京都など7都府県に緊急事態宣言を出した直後の4月12~13日時点で、テレワークの実施率は東京都で約52%、全国で約27%と、政府目標の7割を下回っていた。その大きな理由の一つが、「週に1回は、はんこを押すため出社しないといけない」など、押印の作業だと指摘されている。

   役所や企業では、決裁に印鑑を使う習慣が定着している。書類はパソコンで作成できるのに、その書類を印刷し、押印して提出しなければ認められないことが長年の慣習になっているのだ。

   電子帳簿保存法(1998年)やデジタル手続法(2019年)などにより、紙の事務を電子化することは既に法的に認められており、大半の書類が電子署名で済むことになっている。しかし「取引先が押印しないと契約してくれない」など、根深い事情が押印文化を温存してきた。

   デジタル化を推進すべき竹本直一IT担当相が「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(はんこ議連)の会長を務めているのは象徴的だ。竹本氏は、就任当初から「行政手続きのデジタル化とハンコ文化の両立を目指す」との考えを示しており、事実上、はんこ文化廃止の抵抗勢力のような存在でもある。こんな状況で民間企業の印鑑廃止など進むはずがなく、IT企業などからは「デジタル化はかけ声倒れ」との皮肉も出ていた。

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