戦争放棄の記述を「前文」にとどめたかった日本側
だが、それも一蹴され、日本政府は3月6日にGHQ案をベースにした「憲法改正草案要綱」を公表。翌3月7日付けで作成された「白洲手記」も広く知られている。手記では一連の経緯が淡々と綴られるが、最後は
「斯ノ如クシテコノ敗戦最露出ノ憲法案ハ生ル『今に見ていろ』ト云フ氣持抑ヘ切レス ヒソカニ涙ス」
という感情があふれる1文で結ばれる。手記に記された経緯では、松本委員長とホイットニーGHQ民政局長らが2月22日に面会した際の米側の要求について
「戰争排除ノ一章ヲ排除シテソノ主旨ヲ『プレアンブル』ニ含入セシムルコトハ反對、飽迄本文中ニ堂々ト書クベシトノ意見ナリ」
と記している。つまり、日本側からは戦争放棄に関する記述を「前文」の中にとどめたかったが、米側は、あくまで一つの章を割いて記述すべきだと主張したと読み取れる。現行憲法の第9条は、「第2章 戦争の放棄」の中に含まれている。
宮澤氏は「白洲次郎(コロナ・ブックス)」(1999年、平凡社)のインタビューで、白洲の存在について
「兄貴分というのも違うし、『親父』ほど離れてもいない。まさに英語でいうところの『フレンド』」
と明かしている。こういった比較的近い関係の中で、9条が「米軍から強引に挿入された」経緯を宮澤氏が白洲から聞かされていた可能性もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)