中国は2020年4月29日、日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議を5月22日に開くことを決め、北京市内も地方から上京する人の14日間の隔離を解除することになった。こうした情報が入ってきた途端、北京市内の交通量は以前と同じ状態に戻り、ネット上の飛行機チケットは、もうほとんど割引のない元の値段に戻った。
中国の全人代の開会は、中国が新型コロナウイルスとの戦いに勝利し、市民たちが普通の生活に戻っていることを意味する。
都市封鎖解除の象徴としての意味
日本の国会は新年が明けて間もなく開かれ、6月の終わりまで続くが、中国では新年が明けると、まず市や県の人民代表大会が開く。その後、省の人民代表大会を開いて、2月の春節が終わってから、3月早々に全国人民代表大会を開くのが通例で、だいたい2週間の日程で終わることになっている。
2020年は、新型コロナウイルスの爆発的な感染地となった武漢市で1月7日に市の人民代表大会が開かれ、1月10日には湖北省の人民代表大会が開れた。
その少し前の2019年末に巷で噂されていた原因不明の肺炎の情報は、武漢市、湖北省の人民代表大会が開かれる間、発信がほとんど途切れた。ところが、1月20日に湖北省の人民代表大会が終わったとたん、新型コロナ肺炎の患者が4人発生したと同省が情報を公開した。
そこから全中国は、2か月あまりの新型コロナとの戦いに入った。武漢市、湖北省では都市閉鎖(ロックダウン)が実施され、その他の地域でも緊急事態宣言をしたわけではないが、ほぼ人の流れは途切れた。
その結果、例年3月5日に開かれる全国人民代表大会も、いつ開かれるか、もう誰も分からなくなっていた。コロナウイルスの感染が収束に向かい、休校状態だった全中国のほとんどの学校、大学が5月に入ってから再開されるのが決まっても、全人代開催についての情報は出て来なかった。
「学校が始まったら、社会生活が正常化するのではなく、全人代が開かれてはじめて対新型コロナの戦いが一段落する」
と多くの中国市民は思っている。
5月22日に全国人民代表大会を開き、その前の21日に全国政治協商会議を開くという情報が4月29日午前10時に中国中央電視台(CCTV)から伝えると、中国市民は「これで3か月あまりの緊急事態が本当に終わり、待ち望んでいた都市再解放はやってきた」と実感した。
ホテルや高速鉄道の予約サイトにアクセス殺到
この2、3か月間、多くの中国市民はパジャマ一枚で過ごしてきたが、このニュースで思いついたのが、ようやく遠いところへ出かけられるということだった。
同じ4月29日午後、北京市政府は国民が北京に入ってくる際に14日間の隔離を条件とすることを解除することも発表した。
全人代のニュースにつづいて、北京が隔離を解除するニュースが入ってくると、飛行機や高速鉄道のチケットの購入、ホテルや公園の入園チケットの予約サイトであるctripは、すぐにアクセスが殺到して使いにくくなり、飛行機のチケットの価格は、それまでの数倍から十数倍にも値上がりした。
4月29日の北京日報には以下の報道があった。
「関連情報が発信されてから30分後に、北京発の飛行機チケットのアクセスはその前より一時15倍も増え、レジャー、ホテルなどの観光関連のサービスに対して問い合わせが3倍以上も増加した」
一方、筆者が入居している労働者、農民が入っている団地は、5月1日から写真付きの出入り証明書を使うようになった。
「帰京する人の14日間隔離は解除したが、団地の出入りはいままで通りに厳しくチェックする。第二波の襲来への備えは一刻も緩んではいけない」
テープレコーダのように団地の民生委員は筆者の質問に答えた。
筆者も10年ぶりに顔写真を撮り、団地出入りの証明書を作った。5月1日から5日までの中国の5月黄金週(ゴールデンウィーク)の間にはどこにも出かけない。
(在北京ジャーナリスト 陳言)