「客が通常の2倍以上」「『どう考えても不要不急だろう』と思われる手続きが大半」。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で、各地の郵便局が窓口業務に追われ疲弊している実態が浮かび上がった。外出自粛の広がりでインターネットを介したフリーマーケットの需要増による郵送や、ハガキの交換、小銭の入金などのために訪れる客が後を絶たないという。
屋内の局で多くの客と接する郵便窓口は「3密(密閉・密集・密接)」状態で日々業務にあたる。感染リスクへの不安を訴える声はもちろん、人との接触8割減は「我々にとっては机上の空論」という諦めに近い嘆きの声、さらに一部郵送物の取り扱い停止を求める声もある。
一方で、替えの利かない郵便事業は新型インフルエンザ等対策特別措置法上の「指定公共機関」に位置づけられる。日本郵便は2020年4月30日のJ-CASTニュースの取材に「物流業務というライフラインを担っているという認識であり、現時点では、総量規制やサービス停止は考えておりません」としている。
「さながら年末年始並みのお客様が殺到」
東京23区内のある郵便局には5月1日夕、ざっと40~50人の客が訪れ、屋内で待機していた。立っている人も多く、もちろん隣り合って椅子に座る人も多い。この局で働くAさん(40代男性)は、「ピーク時には70人以上のお客様にお待ちいただいておりました」と話し、「さながら年末年始並みのお客様が殺到し、連日3密状態にあります。窓口社員は疲弊しきっています」と現状を明かす。
「仕事が休みになって時間ができた人達が、身の回りの不要になったものなどをECサイトで出品し、売れたものを発送しにくる方々が激増しています。それは、命と引き換えにしてまでも、今日出さなきゃいけないものなのでしょうか? 『不要不急』の意味が理解されているのでしょうか?」
Aさんは「1日の間に700~800人のお客様が来られます。例年、春先でこれだけ混雑することはありません。ネットオークションやフリマアプリでの個人間取引のため、郵送を利用される方が非常に多くなっています」と明かす。特に混雑するのは15時以降だ。
直営・簡易郵便局あわせて全国約2万3000局(3月末時点)を構える日本郵便。新型コロナウイルス拡大にともない、3月下旬から段階的に営業時間の短縮を進めている。公式サイトによると、郵便窓口は現在基本的に、小規模な局では15時まで、一部の大規模な局では19時(土日休日は18時)までの営業となっている(例外あり)。特に緊急事態宣言が最初に発令された7都府県では早期に短縮がはじまった。
Aさんが勤める郵便局は19時までの営業。周辺の15時で閉まる局を利用できなかった人が、19時まで営業する局に集まるのではないかという。
「窓口にビニールカーテンをかけて飛沫対策をしていますが、荷物の受け渡しでカーテンをめくることが多いので、ほとんど意味をなしていません。特に夕方は常に50人以上のお客様が待っているような状態で、距離をとって屋外でお待ちいただくようお願いしていますが、強制はできませんし、雨の日は外で待たせるわけにいかず、結局ロビーまで入ってこられることが多くなります」
今の願いとして、「正直に申し上げれば...お客様に来てほしくないというのが一番です。その用件が本当に『不要不急』でないかどうか、今一度考えていただきたいです。もし郵便局で感染者が出たら、一時的に営業を止めたり縮小したりせざるを得ません。そうなると管轄区域内の郵送網全体に影響が出かねません」と話している。Aさんはゴールデンウィーク(GW)中も複数回勤務する。