「種苗法改正案」で農家が窮地に? 柴咲コウ警鐘も、農水省「誤解が解ければ反対する理由ないのでは」

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   国会に上程された種苗法の改正案について、女優の柴咲コウさん(38)がツイッターで一時批判したことから、ネット上で論議になっている。

   一部の新聞なども批判しているが、何が問題なのだろうか。農水省の担当課にも話を聞いた。

  • 柴咲コウさんは、ツイートの趣旨を説明
    柴咲コウさんは、ツイートの趣旨を説明
  • 柴咲コウさんは、ツイートの趣旨を説明

「日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます」

   「新型コロナの水面下で、『種苗法』改正が行われようとしています」。柴咲さんは2020年4月30日、ツイッターでこう切り出した。

   ネット上では、感染拡大への対応ぶりに注目が集まる陰で、政府が論議のあるいくつかの重要法案を国会で通そうとしていると、話題になっている。柴咲さんは、そのことを意識したらしく、次のように問題提起した。

「自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは、他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」

   著名人の発言だけに、柴咲さんのツイートは大きな反響を呼び、その反応を報じたスポーツ紙もあった。しかし、その意見については、賛否が分かれている。

   種苗法については、政府が3月3日に改正案を閣議決定して国会に提出した。農水省サイトの説明によると、日本で開発されたブドウやイチゴなどの優良品種が海外に流出し、第3国に輸出・産地化されるケースがあるなどとして、国内で品種開発を滞らせないよう、新品種を保護するのが目的としている。米や果物、野菜の9割前後の一般品種は制限せず、ゆめぴりかのような米やシャインマスカットのようなブドウといった登録品種について、自家採種などを制限する内容だ。

   ところが、国会上程の前後から、農水相経験者や農業ジャーナリストらがブログなどで問題点を指摘し、地方議会からも慎重な審議を求める意見書が可決されるようになった。

「農家の経営圧迫につながる」「権利者を保護するための改正だ」

   札幌市議会は、3月30日付の意見書で、農家の自家増殖の権利を著しく制限したり、許諾の手続きに負担が生じたりして、農家の経営圧迫につながる懸念もあると指摘している。

   東京新聞も、問題点を追及しており、4月25日付社説では、「農業崩壊にならないか」のタイトルで、農家は民間の高価な種を毎年購入せざるをえなくなり、自給率の低下にもつながるなどと疑問を呈した。一部の農民団体も、外資企業が日本になだれ込むといった批判をツイッターなどで繰り返し、改正に反対するネット署名運動も始まっている。

   一方、種苗法改正に理解を示す声も、農業研究者やジャーナリストらから次々に寄せられている。

   新しい品種の権利が侵害され海外に流出するケースがあって権利者を保護するための改正だ、国際競争力を持つ日本の種苗企業に対してその開発力を育てる発想が必要になる、といった意見だ。

   こうした声が柴咲さんのツイッターにも寄せられ、柴咲さんは、前出のツイートを削除したうえで、「何かを糾弾しているのではなく、知らない人が多いことに危惧しているので触れました」と説明した。そして、「きちんと議論がされて様々な観点から審議する必要のある課題かと感じました」としている。

農水省「国内からの持ち出しを止めるための非常に重要な改正」

   農家が窮地になるとの批判に対し、農水省の知的財産課は5月1日、J-CASTニュースの取材にこう反論した。

「プロが作った種で品質が下がるのを止めることが可能で、むしろ産地形成にプラスになります。農業を発展させるための改正ですので、農業崩壊はしないと考えています。許諾などの手続きが煩雑になる懸念は確かにありますので、煩雑さをできるだけ少なくしたいです。一般品種については自家増殖できますので、誤解が解ければ反対する理由はないのではと思っています」

   そのうえで、種苗法改正の意義をこう説明した。

「国内からの持ち出しを止めるための非常に重要な改正であり、もちろん海外での品種登録も進めたいと考えています。日本の品種は、海外に比べても優れていますので、外資企業などから高価な種を買わないといけないということは考えられません。海外に負けない品種を作るためのモチベーションになりますので、制限しないことは逆に外資の攻勢を許すことにもつながります」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

姉妹サイト