介護をはじめとした高齢者福祉が専門の高野龍昭・東洋大学ライフデザイン学部准教授(56)が2020年4月30日、日本記者クラブを通じてウェブ会見し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大によって、感染症対策に不慣れな現場職員にストレスがたまっていることなどを指摘した。
高野氏は、介護施設の休業や縮小、経営難による「介護崩壊」を懸念。「介護と医療は表裏一体」とも述べ、現場への支援の必要性を訴えた。
「介護職員は非常にストレスをためています」
厚生労働省からは連日、新型コロナウイルスに関する事務連絡が介護現場に届き、「職員の感染などにより人員基準を満たさなくてもサービス提供を続けられる」など実態に即した支援もなされているという。高野氏は「こうした施策で『現場は助かっている』という意見があります」とする一方で、「効果が行き渡っていない部分もあります」と指摘。介護現場にかかる負荷と必要な支援についてこう述べる。
「介護職員は非常にストレスをためています。要因の1つは感染症対策に『不慣れ』だからです。ある職員に聞いたところ、厚労省のガイドラインはここ1か月で数百ページ分が出ており、読みこなせていないということです。だから具体的なノウハウの助言が必要です。職員のストレスに対して、メンタルサポート窓口を立ち上げた事業者団体もあります。こうした動きは非常に重要だと思います」
新型コロナの影響で「高齢者虐待」が在宅だけでなく介護施設でも増えるかという質問が出ると、高野氏は介護職員のメンタル面への懸念とともに「可能性はある」と答えている。
「高齢者虐待に関する厚労省の報告によると、介護職員による高齢者虐待のデータもあります。原因の上位は、『介護の仕方が分からない』『介護で行き詰まった時の教育体制が不十分』『ストレスがたまる』といったものです。
今これだけ新型コロナの感染が広がっていると、感染症対策の理解が不十分で、目の前の高齢者の要望にうまく対応できないために、虐待が施設でも起きる可能性はあります。そもそも今、介護職員はストレスフルな中で働いており、新型コロナウイルスによって新しい業務が出てきました。それで余計にストレスをためこみ、虐待リスクになる可能性は当然あると思います」