北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の動静が「写真つき」で報じられなくなって半月が経つが、正恩氏の容体が「重篤」だとする米CNNの報道にも否定的な見方が増えてきた。2020年4月23日(米東部時間)の会見でCNNの報道について「正しくないと思う」としていた米国のトランプ大統領は、後の会見で「彼がどうしているかについては、比較的分かっている」と踏み込んだ。
韓国政府も、重篤説が飛び交う状況を、根拠不明の情報が飛び交う「インフォデミック」だと主張している。
「どうしているかについては、比較的分かっている」が「居場所は誰も知らない」
トランプ氏は4月27日(米東部時間)の記者会見で、正恩氏の健康状態を尋ねる質問について
「正確なことは言えない。目星はついているが、今は言えない」
「元気であることを願っている。彼がどうしているかについては、比較的分かっている。そう遠くない将来に明らかになるだろう」
などと述べ、動静をある程度把握しているとの見方を示した。
ただ、米議員の中には死亡説や重篤説の信ぴょう性が高いと見る向きもある。共和党のグラハム上院議員は4月25日にフォックスニュースに出演し、
「(北朝鮮は)閉鎖社会だ。直接には何も知らないが、彼が死亡したり無能力状態になったりしていないとすれば驚きだ。閉ざされた社会で、こういったうわさの拡散を放置したり、回答しないままにしたりはしないだろう」
などと主張。さらに、「閉ざされた社会」について、「北朝鮮という、国ではなく、実際にはカルト宗教団体」と発言した。
グラハム氏の発言について見解を求められたトランプ氏は、
「彼(グラハム氏)は土曜日(4月25日)には何も言っていない」
「彼(正恩氏)の居場所は誰も知らない。彼(グラハム氏)がそんなこと言ったはずがない」
などとかみ合わない反応を見せた。トランプ氏としては「どうしているか」はある程度把握している一方で、居場所については把握していないことを明らかにしたとも言えそうだ。
金一家専用病院は「保健所と同じで手術や手術をすることができる施設がない」
北朝鮮メディアの正恩氏をめぐる動静報道は活発だ。この半月だけでも、正恩氏が4月17日にシリア、18日にジンバブエ、20日のキューバ、22日にシリア、27日に南アフリカに祝電や答電を送ったことを写真なしで報じ、27日付けの労働新聞には
「最高指導者金正恩党委員長が元山葛麻海岸観光地区(江原道)の建設を積極的に支援した活動家と人々に感謝贈る」
と題した記事が掲載された。ただ、この記事の中に日付や写真はない。
韓国メディアによると、金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一相は4月28日の国会答弁で、北朝鮮メディアの動向が「正常な国政遂行を示唆している」との見方を示しながら、重篤説が飛び交う状況を「インフォデミック」だと指摘。
「韓国政府は、(北朝鮮の内部に)特異動向はないと自信を持って言えるほどの情報能力を備えている」
「韓米の間で、情報の評価は大きくは変わらない」
とした。
CNNは正恩氏が「重篤」だとする一方で、北朝鮮専門サイトのデイリーNKが、正恩氏「金氏一家の専用病院・香山診療所」で「心血管疾患の手術」を受けて経過良好だと報じている。金統一相は、この診療所について「保健所と同じで手術や手術をすることができる施設がない」として、報道を否定した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)