派閥を作ることを嫌った理由は...
独自の視点から選手、コーチらが驚くような戦略を次々と披露した野村氏は、その一方でいち社会人として野球以外の指導にも尽力した。
「野村さんはよく『周りから評価を得られるようにしっかりと仕事をしなさい』とおっしゃっていました。社会人として恥ずかしくないような行動をしなさいと。選手は日ごろからこのような指導を受けていましたから、人間的にしっかりした選手が多かったです。日本代表チームでもヤクルトの選手がキャプテンを務めることも多く、選手としての力はもちろん、人間性が認められたからだと思っています」(橋上氏)
また、楽天の監督時代、野村氏はコーチ陣と一定の距離を保っていたという。チーム内がギクシャクするという理由で派閥を作ることを嫌った。
「遠征に出ると試合後に2、3時間ミーティングをしてから宿泊しているホテルで食事をするわけですが、野村さんが座る場所はいつも決まっていました。5、6人掛けの丸テーブルに野村さんとマネージャー、球団代表、そして私が同席します。私はヘッドコーチでしたので同席させていただきましたが、他のコーチが同席することを嫌がりました。監督が派閥を作ると、選手に影響を及ぼすと考えていたようです」(橋上氏)