引退よりも「面倒な」ケースとは
では、俳優が引退している場合はどうなのか。その場合でも当時の所属事務所から許諾が得られればよく、俳優本人に許可を取らなくともよいだろうとのことだ。引退しているか否かは、再放送の難易度に「直接は関係ないでしょう」(河西弁護士)とのこと。出演俳優が引退していても、事務所との間で許諾と使用料の交渉ができていればOKなためである。出演俳優が不祥事を起こした作品であっても、制作局と所属事務所でこのように合意が成立すれば放映は可能だ。
したがって、引退した江角マキコさん主演の「ショムニ」や、麻薬取締法違反で逮捕・引退状態の沢尻エリカさん主演の「1リットルの涙」(いずれもフジテレビ系)も権利的なハードルだけならその他の作品と変わらない。
むしろ、俳優が収録時から所属事務所を移籍している場合の方が厄介ではないかと河西弁護士は指摘した。現所属の事務所と、旧所属の事務所で交渉が必須になるためだ。現事務所が窓口となって旧事務所と使用料を協議する必要があり、いわば俳優の「価値」を双方の事務所がどう推し量るかで、交渉が成立しない場合もあり得る。様々な事情をクリアして、名作の再放送は実現しているというわけだ。