外勤中止で家族を養えなく...「医局崩壊」への懸念
外勤中止の影響は、若手医師の懐にも直撃する。
教授を頂点とする「医局ピラミッド」で下層を支える研修医や大学院生の多くは、大学業務や学業の傍ら、地域の病院で外勤をしている。ここでの「アルバイト代」が大きな収入源となる。
大森さんは日大の給与体系を次のように説明する。
「通常、専修医は週に最低4日、有給職は5日、大学病院で働きます。残りの日で外勤します。初期研修医(2年)は月24万、専修医となる3年目が21.5万、4年目以降が15.5万(いずれも額面)でだんだんと減っていく不思議なシステムです。専修医のみ外勤禁止で大学から月15万円の補填が決まりましたが、大学からの給料だけでは生活が厳しい人がほとんどです。
時間外労働をした手当も認められるようになったのはここ1、2年ほどであり、それまで賃金は無支給でした。時間外だけで60~100時間働いても実際に請求できるのは10時間もなかったケースは今でもあります。
去年、無給医問題が話題になって、それまで全くもらっていなかった大学院生らが過去数年分にさかのぼって支給されましたが、時給でいうと東京の最低賃金の分だけ。院生はその値段で病棟業務をやっていて、研究をしてたまに病棟をやるだけだと給与が月5万円くらいしかもらえない」
ここで、医局員が絶対的に不足する「医局崩壊」の懸念が出てくる。緊急事態宣言の延長もありえるだけに、派遣中止も伸びる可能性がある。
「このままでは地域医療の崩壊はもちろん、まともな生活ができない医師が出てきて『医局崩壊』を起こしかねません。独り身であればこの給料でもやっていけますが、家族がいて、子供がいてとなったら生計が立てられないので、外勤中止がずっと続くなら退職しないといけないという人もいると思います。みんなで一丸となり今回の感染症対策をするために医師を大学に集約するのであれば、金銭面に文句を言う医師は誰もいません。
しかし今回の措置は不適切な人員配置のみで実態の伴わないものであり大学に対して不満を覚えた医師がほとんどではないでしょうか。それにより今後医局崩壊を起こしかねません。このような絶対的な指示はするべきではなく同じような措置をとる施設が今後出てこないことを強く望みます」(大森さん)
医局の重要な役割の一つに地域への医師供給が挙げられるが、崩壊してしまえばしたくてもできない。