「何もせずに見ているのは心苦しい」
一方、医局業務が忙しくなるかといえばそうではない。不適切な人員配置で「余剰」が生じているという。
大森さんは新型コロナ発生前の働き方を「科によって幅がありますが、当直が週に1回から3回。当直明けの休みが規定されている科は少ないので、そのまま病棟業務、外勤勤務が続くことがあり、数日連続の勤務もあります」と振り返る(※)。感染拡大後は外勤先で新型コロナの感染が疑われる患者を診察することもあった。
※日大に限らず、医師(特に2、30代の若手)の長時間労働は常態化している。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書によれば、大学病院の約9割で時間外勤務が年間 1860時間超とみられる医師がいる。月換算で155時間と、過労死ライン(80時間)の2倍になる。昨春施行された働き方改革関連法で上限規制が設けられたが、2024年4月まで猶予される。
しかし、東京都が3月後半に不要不急の外出自粛要請を出して以降、「通常業務は減っている」と実感を語る。
「外出自粛要請などの影響で、人が外出していなかったり動かなかったりする状況なので、たとえば交通事故患者、外傷患者が減って一般入院の数が減りました」
コロナ禍で医師の過重労働が懸念されているが、
「新規入院、外来を止めている病院もありますが、うちでは普通に行われていて、むしろ過剰に医師が余っています。専修医(後期研修医)は自宅待機とされていますが、有給職は週 6での出勤を命じられていてます。大学病院に医師を集約したところで患者数に対して医師数のみ過剰になっています。医師の適正配置が必要で、地域で医師を必要としているところに配置しないと医療崩壊が起こっていくんじゃないかと懸念しています。
もちろん、コロナ専属のチームの疲弊は計り知れません。発熱外来をすべて対応し、重症患者の管理をしてかなり疲弊しています。4月から各科からの応援医師の要請がありましたが、ほとんどの医師には関係ない話です。であれば地域のためにも貢献できることを正直続けたかった。今現場で頑張っている人がいる中で、それを何もせず見ているのは心苦しい」(大森さん)
関連病院と医局員から外勤中止を撤回するよう嘆願書も出されたが、大学側は一部の容認のみでほとんど応じなかったという。