元通訳が明かす外国人助っ人ユニークエピソード トイレから選手の奇声、確認すると...

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   新型コロナウイルスの感染拡大を受け、プロ野球の開幕が先延ばしになっている。多くのプロ野球ファンが、ウイルス感染拡大の収束を願いつつ開幕を待ち望んでいることだろう。

   プロ野球のみならず、日本のスポーツ界に暗いニュースが続くなか、J-CASTニュース編集部は、プロ野球の元通訳を取材。元通訳が明かした過去に来日したMLB選手の数々のユニークなエピソードを紹介したい。

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「ウォー!」

   今回、取材した元通訳は、1990年代から20年以上、日本の複数の球団で通訳を務めた経験を持つ人物で、数多くの外国人助っ人に関わってきた。この元通訳によると、生活様式が異なる日本での生活に全くなじめなかった選手がいた一方で、徐々に日本での生活に慣れ、日本での生活を楽しんでいた選手もいたという。20年以上、通訳として様々な選手と触れ合ってきたなかで、印象に残っている出来事を教えてくれた。

   1つ目は、トイレにまつわるエピソードだ。時代は1990年代後半、春季キャプに備えて地方のホテルに宿泊した時のこと。通訳が選手をホテルの部屋まで送り、翌日のスケジュールを確認して部屋から出ようとした時、トイレから「ウォー!」という選手の大きな声が聞こえてきた。通訳が驚いてトイレに向かったところ、選手が顔を真っ赤にさせて、こう叫んだという。

「なんだこの便器は!便器にファックスマシーンが乗ってるぞ!」

   この選手は初めてウォシュレット式の便器を見たという。この選手のように、温水洗浄便座を初めて見た選手の多くは驚き、戸惑うそうだ。その一方で、とりこになった選手もおり、帰国して自身で購入して使用している選手もいるという。

「どうしていいか分からずパニックになった」

   続いてまたもトイレにまつわるエピソードを紹介したい。1990年代の初めの頃の話だ。その日、ファームで試合が行われた。この話の主人公である選手は、1回の守備が終わると同時に球場脇に設置されていた移動式のトイレに駆け込んだ。この選手の打順は3番で、1回の攻撃で必ず打席が回ってくる。1回裏の攻撃が始まり、1番バッターが打ち終わっても3番打者が戻ってこない。慌てた通訳はトイレに駆け寄り、「早くしろ。次がお前の打席だ」とノックしながら叫んだという。

   扉の向こうからは「あと少し待ってくれ」としか返答がなく、なぜかドアノブがガタガタきしんでいたという。5分近くトイレにこもった後、トイレから出てきたその選手はパンツを上げながら打席に向かい、ギリギリ「セーフ」で間に合ったという。その打席でヒットを打ったか凡退したかは定かではないが、ベンチに戻ってきた選手に通訳がなぜそんなに用をたすのに時間がかかったのか問い詰めたところ、選手は次のように返答したという。

「やり方が分からなかったんだ...。どうやって座ったらいいのか分からなかった。日本式の便器を見たのは初めてだったから、どうしていいか分からずパニックになった」

   球場脇に設置されていたトイレは和式のもので、その選手は迷った末に中腰の姿勢をとり、ドアノブを握りしめながら用をたしたという。元通訳は「和式トイレが初めてだったらしく、反対を向いて用をたしたようです。しゃがむことが出来ず、ドアノブをつかむことで中腰の姿勢をなんとか保ったと言ってました」と説明した。

ボールが見えなくなった原因は...

   次のエピソードは、ペナントレース終盤での出来事だ。夏場を過ぎてから打率が下がりだしたある選手が、通訳にこう言ってきたという。

「バッターボックスでボールが全然見えないんだ」

   これを聞き、慌てた通訳は急いでその選手を病院に連れていき精密検査を受けさせた。数日後に出た診断の結果は、ストレスによる「ドライアイ」だった。打席に入って目が乾くあまり、瞬きを激しく繰り返したことで、ボールが見えなかったという。その選手は単年契約だったため、翌年の契約を勝ち取るためには結果を残すことが必要だった。これが大きなプレッシャーとなり、多大なストレスが溜まったという。

   また、初来日した選手に「試食」させる定番の食べ物は「納豆」と「梅干し」だ。チームメイトが外国人選手のリアクション見たさに勧めるそうだ。残念ながら「納豆」と「梅干し」はあまり外国人選手の受けが良くなく、好んで食する選手は少ないという。その一方で、人気のメニューは「寿司」と「焼肉」だ。元通訳によると、過去には絶対に他人に肉を焼かせない「焼肉奉行」もいたそうで、その選手は相当なこだわりを持っていたという。

「日本に来る多くの選手は不安を抱えています。野球のスタイルも日米では異なりますし、言葉が通じないストレスもあります。食文化や気候になじめない選手もいます。そのような選手らの生活をサポートするのも通訳の役目です。グランドの中だけではなく、生活の一部を共有することで選手の性格などが見えてきますし、新たな発見もあります。いま、新型コロナウイルスの影響で多くの外国人選手が不安の中にいると思いますが、なんとかモチベーションを保って頑張ってほしいですね」(元通訳)
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