新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が一律に給付する10万円について、政治家や公務員が受け取るべきなのかを巡って、著名人らがネット上で発言している。
政府の閣僚らを始め、辞退表明する動きが相次ぐ中、逆に「受け取ります」と宣言した政治家に賞賛も。給付の趣旨から異論も噴出して...。
和光市長は「全部地域で消費」、国民民主党代表は「寄付」
「#10万円もらう政治家」。埼玉県和光市の松本武洋市長は2020年4月21日、こんな刺激的なハッシュタグを付けて、ツイッターでこう宣言した。
その背景には、安倍晋三首相と全閣僚が20日に、副大臣と政務官も21日に、10万円の受け取りを辞退することを申し合わせたことがあるらしい。中央政界では、辞退が当然だとする雰囲気になる中、松本市長は、こんな投稿をしてネットの注目を浴びた。
「10万円、私は申請して、全部地域で消費させていただきます。申請しないと国庫に溶けてしまうだけ。本来、和光市には来ないお金なので、全額きっちり市内で使います。時節柄、飲食店のテイクアウトかなあ」
松本市長は、10万円について、「地域を支える給付金、と勝手に解釈します!」とも書いている。
これに対し、地方の政治家から賛同の声が相次ぎ、中央政界でも、松本市長に同調するような声が出始めた。
国民民主党の玉木雄一郎代表も同日、「私は10万円を受け取る」とツイッターで宣言した。
「マイナンバーでの給付を実際に体験して給付スピードなどを確認したいし、受け取ったお金は日本骨髄バンクなどに寄付するつもりだ。とにかく受けとらないことを善とする風潮を政治家が作り出すのはナンセンスだ。本来、支援を受けるべき人の心理的ハードルを上げるべきではない」
広島県知事の発言は「パワハラ」?波紋
一方、元大阪府知事の橋下徹氏(50)は4月21日、政治家や公務員は10万円を受け取るべきではないとして、こう主張した。
「給料がびた一文減らない国会議員、地方議員、公務員は受け取り禁止!となぜルール化しないのか。その上で、それでも受け取ったら詐欺にあたる、懲戒処分になると宣言すればいいだけなのに、これも各自に任せるといういつもの無責任政治。国会議員でも絶対受け取る奴はいるよ」
橋下氏は、「感染のリスクの中で奔走している現場の公務員たちには、たっぷりと特別手当を支給すればいいだけ」だと指摘し、議員は特に必要ないと力説した。10万円は生活保障だとして、生活保護の受給者にも必要ないと述べ、受給禁止のルール設定を政府に求めている。寄付や経済対策については、「別の話」だと主張した。
こうしたルールがない中、自主的に職員の10万円寄付を求めたのが、広島県の湯崎英彦知事だ。
湯崎知事は、21日の会見で、休業要請の協力金を出すのに財源が圧倒的に不足しているなどとして、職員の受け取り分について「聖域なく活用を検討したい」考えを明らかにした。これが報じられると、職員に同調圧力がかかってパワハラになりかねないと疑問や批判が相次ぎ、22日になって、湯崎知事は、「誤解を生む言い方だった」と釈明し、活用はないと事実上、発言を撤回した。
「個人差があるのに、それをズバッと切っていいのか」
閣僚らの10万円受け取り辞退などの動きについて、ネット上では、「これで今まで通り給料受け取ってる批判かわせる」と理解を示す声も一部であったが、疑問や批判の方が多い。
「スピード重視で一律に配るのが、今回の給付金のやり方であり、意義であるはず」「公務員だってコロナ対策のために一生懸命働いている」「みんな受け取って使った方が良くないか?」「余裕がある人は必要なとこへ寄付をしたり消費をして経済を回すのがベスト」などだ。
政治アナリストの伊藤惇夫さんは、取材に対して、こう話した。
「そもそも全国一律で、所得制限をかけないのが給付金です。強制的に受け取らないようにするのは、本来の趣旨とは違うと思います。あくまで本人の問題であり、受け取った人が消費や寄付を判断すればいい。公務員でも、配偶者の一方が収入がなくなったりなど、環境や背景は様々だと思います。個人差があるのに、それをズバッと切っていいのかどうか。政治家も、『遠慮します』ではなく、受け取って黙って寄付すればいいはずですよ」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)