楽天のPCR検査キット、日本医師会が「懸念」連発 「非常に混乱をきたす可能性」

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   日本医師会が2020年4月22日に会見し、ネット通販大手の楽天が発売した、新型コロナウイルス感染の可能性が分かるという「PCR検査キット」について、「非常に問題が多いものであると考えている」と強い懸念を表明した。

   登壇した同会常任理事で政府専門家会議メンバーの釜萢敏氏が述べた。感染拡大のおそれや、本当は感染しているのに陰性結果となる「偽陰性」の懸念、このキットの検査結果を医療機関でどう扱うかなど、複数の点から問題点を指摘した。

  • 楽天のプレスリリースより
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「非常にリスクが高いと今考えざるを得ません」

   楽天は20日、PCR検査キットを法人向けに発売。検査を受ける本人が試料を採取し、専用回収ボックスを介して回収されると、即日から3日程度で検査結果が出るとしている。

   公式サイトの注意事項やQ&Aには、「本検査キットを用いたリスク判定は、いかなる意味でも診断や医行為を行うものではありません」「新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が検出されるかどうかを検査するものです。陽性や陰性など医療的診断を提示するものではありません」「本検査は、医療的診断ではありません。ご心配な方は、厚生労働省などのガイドラインに従って行動してください」など、同キットによる検査とその結果が医療行為や正式な診断とならないことが繰り返し書かれている。また、楽天などが20日に公表したプレスリリースには、キットの意義について「特定症状はないものの不安を感じられる方がリスクの判定報告を受けることが可能に」とうたっていた。

   PCR検査は現状、設備や人手に限界があり、医師が必要と認めても希望者全員が受けられる体制は構築できていない。その中での検査キット発売には大きな注目が集まった。

   ただ、日本医師会の会見で釜萢氏は、次のように懸念を表明した。

「検体の採取は感染の危険がありますので、ご本人が検体を採取するとしても、周りに感染が拡大してしまうおそれがあります。その態勢が取れるのか。

検体採取は正確に行われることが必要です。検体の採取方法が不適切であれば、結果は信頼できないものになります。そこがどう担保されるかも問題です。PCR検査は実際には感染している場合も『陰性』と出る場合があるし、判断が非常に難しい。

この検査で仮に『陽性』と出て、それをもって医療機関に来られることがあった場合、それをどう扱うか、医療機関としても非常に戸惑うところであります。

この検査を普及させ、ご自身でやってみることについては、非常にリスクが高いと今考えざるを得ません」
「この検査キットを実際に企業が購入して実施することには非常に大きな問題があります」

   「診断や医行為を行うものではない」という注意事項についても、「それ(検査結果)がどう利用されるかは、非常に問題」としている。

「PCRの自己判定キットというのは、大きな一石を投じた」

   一方、釜萢氏は「PCR検査がなかなか実施されない、希望しても受けられないことに対する1つの解決法として提示されたものと思いますが」との認識も示したが、同キットは「非常に混乱をきたす可能性があり、難しい」との姿勢は変わらず。

   釜萢氏は同キットについて、「企業がこの検査を従業員にやってもらうと、その結果をどのように扱うのか、個人情報はどうするか、ということも整理されていない中で、非常に問題が多いものであると考えております」と法人における情報管理の面も懸念した。専門家会議でも議題にあがったといい、「企業で購入が可能になる場合、その結果をもって出勤可能であるとか可能でないとかの判断をされると、非常に大きな誤りにつながる可能性がある。実際には感染しているのにもかかわらず判定が陰性にでる場合はしばしばあるので、職場に非常に感染が広がってしまうことを大変懸念する意見が聞かれました」とした。

   医療機器や医薬品の販売には、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認審査などが必要となる。会見では報道陣から、検査キットの販売を規制する考えはあるかと質問があがり、釜萢氏は「それは国民の安全のため、ぜひ必要だろうと思います。これまではこのような検査薬は、対外診断用医薬品として、国が承認して、基本的には医行為の中で医師が指示して検査するという整理でやってきました」として、

「同様の事例が今後起きないように、厚労省と協議して、国民に対する安全確保するという大きな視点から対応していかなければいけないと強く認識しております」

と答えた。

   今後のPCR検査体制について、釜萢氏は「精度を管理したうえで、幅広く検査できるようにすべきだということは日本医師会としても主張しているところですが、あくまで『医師が必要と認めたケースについて検査できる』ということが大事です。限られた医療資源ですので、国民全体にくまなく実施することは現実には不可能です」と大枠を示した。

   会見に登壇した横倉義武会長も「釜萢先生が述べたような理由で、この検査に頼りすぎることは非常に危険だろうということが、日本医師会の意見」と表明。「PCR検査を十分に受けられないという今の検査体制を早く改善していただきたい。医師が必要と認めた場合、すぐに検査できる体制を作り上げていかないといけない。その意味でも、このPCRの自己判定キットというのは、大きな一石を投じたのだと思います」と検査体制の構築につとめる考えを明らかにした。

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