「PCRの自己判定キットというのは、大きな一石を投じた」
一方、釜萢氏は「PCR検査がなかなか実施されない、希望しても受けられないことに対する1つの解決法として提示されたものと思いますが」との認識も示したが、同キットは「非常に混乱をきたす可能性があり、難しい」との姿勢は変わらず。
釜萢氏は同キットについて、「企業がこの検査を従業員にやってもらうと、その結果をどのように扱うのか、個人情報はどうするか、ということも整理されていない中で、非常に問題が多いものであると考えております」と法人における情報管理の面も懸念した。専門家会議でも議題にあがったといい、「企業で購入が可能になる場合、その結果をもって出勤可能であるとか可能でないとかの判断をされると、非常に大きな誤りにつながる可能性がある。実際には感染しているのにもかかわらず判定が陰性にでる場合はしばしばあるので、職場に非常に感染が広がってしまうことを大変懸念する意見が聞かれました」とした。
医療機器や医薬品の販売には、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認審査などが必要となる。会見では報道陣から、検査キットの販売を規制する考えはあるかと質問があがり、釜萢氏は「それは国民の安全のため、ぜひ必要だろうと思います。これまではこのような検査薬は、対外診断用医薬品として、国が承認して、基本的には医行為の中で医師が指示して検査するという整理でやってきました」として、
「同様の事例が今後起きないように、厚労省と協議して、国民に対する安全確保するという大きな視点から対応していかなければいけないと強く認識しております」
と答えた。
今後のPCR検査体制について、釜萢氏は「精度を管理したうえで、幅広く検査できるようにすべきだということは日本医師会としても主張しているところですが、あくまで『医師が必要と認めたケースについて検査できる』ということが大事です。限られた医療資源ですので、国民全体にくまなく実施することは現実には不可能です」と大枠を示した。
会見に登壇した横倉義武会長も「釜萢先生が述べたような理由で、この検査に頼りすぎることは非常に危険だろうということが、日本医師会の意見」と表明。「PCR検査を十分に受けられないという今の検査体制を早く改善していただきたい。医師が必要と認めた場合、すぐに検査できる体制を作り上げていかないといけない。その意味でも、このPCRの自己判定キットというのは、大きな一石を投じたのだと思います」と検査体制の構築につとめる考えを明らかにした。