原油価格「マイナス」その背景と今後 オイルマネー引き上げで「コロナショックに追い打ちも...」

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コロナショックに追い打ちをかける恐れも

   トランプ大統領を動かしたのは、国内石油産業の苦境への危機感だ。4月1日に米シェール開発の中堅企業が経営破綻するなど、原油価格下落はトランプ大統領の支持基盤のエネルギー産業に深刻な打撃になっていた。11月の大統領選をにらみ、なりふり構わず価格維持に走った。

   サウジ、ロシアは国家財政を石油に頼るだけに、原油安はストレートに響く。サウジの産油コストは1バレル2ドル程度とされるから、採算割れの心配は全くないが、現状の財政支出の水準を維持するために必要な原油価格は60~80ドルにも達するといわれる。同様に、ロシアも政府予算の前提になる価格は42ドルといい、突っ張っては見たものの、シェアの奪い合いを避けて協調減産で価格を引き上げたいのが本音。米国が協調の輪に加わったことで米国にシェアを奪われる懸念が後退したのは朗報だ。

   ただ、この歴史的な合意も、市場の反応は鈍く、原油価格は合意前後も、一時的な上昇はあっても、20ドル近辺に低迷。理由は言うまでもなく新型コロナウイルス。IEAの4月15日の発表では、3月の世界需要は前年同月比1080万バレル減り、4月のマイナス幅は2900万バレル、5月は2580万バレルに膨らむ。冒頭に述べた通り、保管スペースの問題から、とうとう4月20日、「マイナス」という史上初の珍事を引き起こした。

6月以降、徐々に持ち直すと予測しているが、足元で1000万バレル程度の減産では「需給を引き締めるのには力不足で、相場がにわかに反転する可能性は低い」(市場関係者)との見方が多い。

   産油国の財政が悪化していけば、巨額のオイルマネーを引き上げざるを得なくなり、「世界の金融市場が不安定化し、コロナショックに追い打ちをかける恐れもある」(エコノミスト)との声もある。

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