3月のOPECプラスではロシアが減産拒否
ところが、年明けから新型コロナウイルスの感染拡大で需要が落ち込む見通しになってきたことから原油相場が下がり始めた。こんな時こそ協調ということで、3月5日のOPEC臨時総会で日量150万バレルの追加減産案で合意した。ところが、6日のOPECプラスは、ロシアが減産を拒否して決裂。するとサウジは一転、自国の生産を日量1230万バレルに200万バレル以上引き上げる方針を示し、石油相場は急落。NY先物は20日に、29年ぶりに一時、1バレル=20ドルを切り、年初の60ドル前後から3分の1に急落した。
3月末で、それまでの協調減産の期限が切れる中、「仲裁者」として登場したのがトランプ米大統領だ。サウジとロシアが減産を拒めば輸入原油に追加関税をかけるとの脅しまでかけて、4月9日のOPECプラスのテレビ会議で、5月から、2018年10月を基準に、日量1000万バレル(サウジとロシアは各250万バレル)の協調減産が固まった。この時点で40万バレルの減産を求められたメキシコが10万バレルしか減産しないとゴネるハプニングはあったが、4月12日にメキシコの主張を認め、970万バレルの減産で最終合意した。サイジなどアラブ産油国はこの枠外で計200万バレルの追加削減を表明。米国やカナダ、ブラジル、インドネシア、ノルウェーも協力することも確認したという。米国の「協力」の中にはメキシコ分の実質的な肩代わりが含まれるとされる。
ただ、米国の「協力」がどのような形で行われるかは不透明だ。米国は自由経済の旗頭として、OPECを「国際石油カルテル」、つまり談合して価格を吊り上げていると批判してきた歴史がある。そのOPECと公然と手を組んで価格維持に当たるのは、いわば禁じ手。実際に生産を規制するのは容易でないとされ、備蓄積み増しにより実質的に市場に出る石油を減らして減産と同じ効果を狙うという見方が出ている。