弘兼憲史さんの長寿連載マンガ「島耕作」シリーズにも、新型コロナウイルスの影響が現れている。
現在は「相談役 島耕作」になっている本作。これまでも現実の社会情勢を取り入れて人気を博してきたが、作中でのコロナ対策の描写が中途半端ではないか、というツッコミも――。
マスクは冒頭2ページだけ
「モーニング」2020年4月30日号(4月16日発売)に掲載の「取締役 島耕作」では、取締役の島がマスクを着けて出勤する。さすがに「私も72歳の高齢者だから新型コロナウイルスには敏感にならないと...」というセリフがある。ここまではしっかりコロナ対策をやっているように見える。
しかし、島がマスクを着けているのは冒頭2ページだけ。ネタバレになるので詳細は避けるがその後「マスクなしで密室で商談」「地方へ新幹線で出張」「飲食店で会食」と、感染拡大防止のために控えてほしいと国が呼びかけている行動の多くが描かれている。
読者の感想を調べてみると、こうした描写を面白がる一方、
「詰めが甘い」
「テレワーク導入しないのか」
「日本企業のお偉いさんを如実に象徴しているよう」
などが見受けられた。
マンガの世界も「コロナ後」は変わる?
「取締役 島耕作」はフィクションであるし、描いた当時と発行時で新型コロナウイルスの状況も違ってくる。非現実的な描写と読者が受け止めるのも無理はないかもしれない。むしろ、マスク以外は昔ながらの日本企業でありがちな光景が展開されているという中途半端さが日本らしく、かえってリアルだという感想もあるようだ。さらには本作のこれまでの作風から「濃厚接触しないのか」などの展開を期待する感想も出ている。
これに限らず、現代を舞台にしたマンガで新型コロナの影響をどう描くかは、少なくないマンガ家が抱える悩みのようでもある。ドラマ化もされた「クロサギ」などで知られるマンガ家の黒丸(くろまる)さんは、「最近は漫画家仲間と話すと、『今描いてる漫画は、新型コロナが無い世界線。その違和感はどうしたらいいのか』という話になる。特に青年誌は、時代性はなかなか無視できない」とツイッターに投稿している。
社会の習慣が大いに変わってしまいかねない新型コロナの蔓延は、今後マンガの描写にどう影響を与えるだろうか。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)