コロナ直撃の経済情勢下、「前向き」企業の見解とは

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   新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、経済にどれほどのインパクトを与えるのか。2020年3月や4月の経済指標の多くはこれから随時公表されて全容が明らかになっていくが、日銀が4月9日に公表した地域経済報告(さくらリポート)は、コロナショックが及ぼす影響の深刻さをうかがわせる内容になった。

   各地の企業から「インバウンド客に加え、足もとでは国内観光客も大幅に落ち込んでおり、地域の観光産業への影響はリーマン・ショック時より大きい」(京都の宿泊業)といった窮状が寄せられ、全国9地域の全てで景気判断を前回調査(20年1月)から引き下げる結果となった。

  • 経済への影響長期化が懸念されている
    経済への影響長期化が懸念されている
  • 経済への影響長期化が懸念されている

日銀のさくらリポート

   さくらリポートは、日銀が3カ月ごとに開く支店長会議に合わせて公表され、「北海道」から「九州・沖縄」まで全国を9地域に分けて経済情勢を分析している。日銀の本支店が地元企業から景気の現状を聞き取り、それを基に各地域で景気判断をまとめる。全地域の景気判断を同時に引き下げたのは、リーマン・ショックの影響で経済が悪化していた2009年1月以来で、実に11年3カ月ぶりとなる。

   感染拡大がまず影響を及ぼしているのは、人の流れの停滞だ。中国や韓国からの旅行客が減少して、後に日本への入国も制限されるようになった。国内でも不要不急の外出を自粛するよう政府や都道府県が呼びかけている。さくらリポートでは、「海外旅行はそもそもツアーを組成・催行できないほか、国内旅行も大幅減となっている。ゴールデンウイークを含む先行きの予約は例年の2割程度にとどまっており、上期の売上は最低となる見込み」(旅行業)、「職場の懇親会や家族客の外食が落ち込んでいる。年度替わりの書き入れ時に売上が前年比5割減となっている店舗もあり、収益的にはかなり厳しい」(飲食業)といった声を伝えている。感染拡大で東京オリンピック・パラリンピックが1年延期された影響も「大画面や8Kなど高価格テレビの販売が期待していたほど伸びず、目先の収益が下振れる可能性がある」(小売業)といった面で出ている。

   こうした動きが企業の設備投資意欲を鈍らせており、「観光客の激減により貸切バスの予約キャンセルが相次いだことで資金繰り計画に狂いが生じており、今年度は一切の設備投資を見送ることとした」(運輸業)といった声があった。感染拡大は世界的な消費地である米国や欧州を直撃しており、自動車関連業からは「先行きの不透明感が強まっていることから、今年度の設備投資は抑制的な計画とせざるを得ない」との方針も聞かれた。

「アフターコロナ」を見越して

   さくらリポートが公表されたのは4月9日であり、政府が4月7日に東京や大阪など7都府県を対象に発令した緊急事態宣言(のち対象は全国に)の影響はほとんど反映されていない。ますます経済環境は厳しくなると見込まれるが、一方で感染拡大や外出自粛で売れる商品もあり、さくらリポートは「冷凍食品等を買い込む動きが続いており、2月に引き続き3月についても売上は前年を上回った」(スーパー)、「空気清浄機や加湿器の販売が大幅に伸びている。また、買い込んだ冷凍食品を保管するため、専用の冷凍庫を購入する人も目立つ」(家電販売業)といった声も紹介している。

   感染が終息した後の「アフターコロナ」を見越して、「短期的な景気の変動にかかわらず、あらゆるモノをインターネットにつなぐ「IoT」化や次世代通信規格「5G」の商用化、自動車の電装化など中長期的な成長分野への積極的な能力増強投資や研究開発投資を継続している」(電子部品業)といった前向きな企業もある。この局面をいかに乗り越え、終息後にV字回復を果たすための蓄積ができるかどうかが今後の鍵となりそうだ。

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