外出自粛が続くなか、新たな動画配信サービスが始まった。テレビ朝日とKDDIによる「TELASA(テラサ)」だ。
テレビ局主導の有料配信サービスでは、TBSとテレビ東京、WOWOWによる「Paravi(パラビ)」などが先行している。各社との違いはどこにあるのか。
「相棒」「ドクターX」全シーズンが見られる
TELASAは、auユーザー向けの「ビデオパス」を前身とし、2020年4月7日から「みたい!をもっと自由に!」をコンセプトに再スタートを切った。562円(税抜、以下月額)で、テレ朝のドラマやバラエティー、アニメ・特撮、スポーツ番組などに加え、映画(洋邦あわせて1000タイトル以上)や海外ドラマも配信するという。
なかでも目に付くのが、ドラマコンテンツだ。刑事ドラマ「相棒」はプレシーズンと呼ばれる単発番組時代から、20年3月に終了したSeason18まで、約20年にわたる全シリーズが配信されている。また、「ドクターX」や「トリック」、「おっさんずラブ」などは、ディレクターズカット版、関連スピンオフ作品もあわせてラインアップしている。
アニメ・特撮では「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」を常時70エピソード用意するほか、放送中の「仮面ライダーゼロワン」「魔進戦隊キラメイジャー」の見逃し配信も行われる。また、黒柳徹子さんの「徹子の部屋」が、番組開始45年目にして「初配信」されるのも特徴だ。
Paraviは「ドラマだけは、負けたくない。」
テレ朝の強力ドラマを武器に、殴り込みをかけたTELASAだが、目下最大のライバルとなるのは、「ドラマだけは、負けたくない。」をキャッチフレーズとするParavi(税込1027円)だろう。
Paraviは3局のコンテンツを併せ持っているのが強みだ。ドラマでいえば、TBSは「逃げるは恥だが役に立つ」「恋はつづくよどこまでも」といった恋愛モノをはじめ、池井戸潤さん原作作品をはじめとする「日曜劇場」も根強い人気だ。4月開始予定だった「半沢直樹」の続編は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で放送延期されているが、これも登場すればキラーコンテンツになるだろう。一方のテレ東も「孤独のグルメ」といった、実在の店舗やシチュエーションを活用したドラマが得意だ。
日本テレビの番組を豊富に扱っているのが、系列企業が運営するHulu(フールー、税込1026円)だ。「あなたの番です」といった人気ドラマを抱えるが、もともとアメリカ発祥のサービスとあって、「日テレ色」は薄い。反対に局のカラーが現れているのが、FOD(フジテレビオンデマンド)。価格も888円(税抜)と筋金入りだ。
「テレ朝動画」「ABEMA」との競合も
キー局各社と比較して、一番アピールしやすいのは料金設定だ。各社1000円前後としているが、TELASAは600円ちょっとで楽しめる。番組ラインアップに加えて、「値ごろ感」が伝わるかが、今後のカギを握るだろう。
一方で、テレ朝の場合には、自社系列のサービスも競合になりうる。まずは「テレ朝動画」。個別・月額課金でのメダル購入と、月額見放題パックが用意されていて、たとえば「相棒Season18」(全20話)は350メダル(=税抜350円相当)で60日間見られる。視聴習慣によっては、TELASAに乗り換えるユーザーもいるだろう。
サイバーエージェントとの合弁事業であるABEMA(アベマ、4月11日にAbemaTVから改称)は、独自コンテンツを制作する上に、ストリーミング主体ではあるが、動画配信サービスとしては同じ土俵にある。テレ朝はABEMAとTELASAを「すみ分けは可能」(朝日新聞デジタル19年12月13日)としているが、それぞれの立ち位置を整理し、ブランディングを強化する必要はあるだろう。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)