ネットがつないだ歌謡曲とアイマス ビリー・バンバン菅原進&MAD作者・メカPに聞いた

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   芸歴半世紀越えのベテラン歌手が、ネットと出会って新しい音楽性を開拓しつつあるようだ。1969年デビューの兄弟デュオのビリー・バンバンの弟の菅原進さんが、人気ゲーム「アイドルマスター」シリーズの楽曲を「歌ってみた」ところ、アイマスユーザーを中心にネットで知名度が上がった。

   そのきっかけは、ニコニコ動画で流行していた、本人の音声をサンプリングして、あたかも本当に歌っているかのように制作したMAD動画だった。一連の出来事がベテランアーティストと人気ゲームのユーザーに与えた影響について、菅原進さん本人と、動画投稿者の「メカP」さんに話を聞いた。

  • 「いたずら心もあって」歌ってみたと茶目っ気を込めて語った菅原進さん
    「いたずら心もあって」歌ってみたと茶目っ気を込めて語った菅原進さん
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アイマス曲から受けた「刺激」

   はじまりは、メカPさんが19年10月31日に投稿した「ビリー・バンバンが歌う小早川紗枝『薄紅』」という動画。これは「アイドルマスターシンデレラガールズ」のキャラクター・小早川紗枝の楽曲としてリリースされた原曲を、過去の音源を編集することで、ビリー・バンバンが歌っているように編集したものだった。

   ――進さんがMAD動画を知ったのは、19年の11月頃だったそうですね。

僕のマネージャーが見つけてきたんですよ。最初は何だろう?っと思ってたんだけど、すごい世界だな、面白いな、と。僕にとってアニメといえば赤胴鈴之助とかそういう初期のものだったし、それまで全く知らないジャンルの文化でした。調べているうちにこの(ネット動画の世界が)僕らが見て育ってきたテレビと全然違うんだなってだんだんわかってきた。

   ――それで、20年1月13日に最初に投稿したのが「アイマス曲『薄紅』をビリーバンバン菅原進が歌ってみた。」でした。

(薄紅は)第一印象だとテンポが速い曲なんだけど、分解するとメロディーがきれいなんです。僕が歌ってきた世界に合うかもな、と思って、ゆったりめに歌ってみることを思いついたんです。僕なりに一味違う「薄紅」の世界が作れるのではないかと。

   ――そうしたら、「歌っていただいた」なんてタグもつき、アイマスのユーザーの皆さんが動画を拡散、かなりの反響がありました(再生数は30万回以上)。さらに同じアイマスの別タイトル、アイドルマスターミリオンライブ!からエミリースチュアート名義の「はなしらべ」も、メカPさんの動画をもとに進さんの歌唱も投稿されています。

僕なりのテンポ感で歌ってみたんだけど、これをすごくいいなと思ってくれる人がたくさんいてくれました。自分が歌ってきた曲じゃないから、どんな感触になるかわからなかったけど、でもその分勉強させてもらいました。

   ――「勉強」というと?

   例えば、「薄紅」の次に歌ってみた「はなしらべ」は音程の上下がある結構難しい曲でした。歌い出しが特にそうです。すごくいいメロディーであるとともに、僕には思いつかない。次にくるフレーズが予想つかなくて勉強になる。

   ――進さんが50年間経験してきた歌謡曲とはやはり違うのでしょうか?

歌謡曲とは違う。独特な世界なんですが、コード進行は歌謡曲というより洋楽的です。ただそれだけじゃなくて、どんどんコードが違うパターンに展開していくパートもあって、そこは(キャラクターに合わせて)日本的だなと思います。

   ――もうそれから、すっかりアイマスユーザーにも受け入れられています。

まさかこんなに反響があるとは、と思いましたけど。何というか、せっかくMADを見つけたので、この曲で本当に僕が歌ってみたらびっくりするだろうなといういたずら心で始めたものだった(笑)ただ、技術はすごくて本当に僕が歌っているみたいなんだけど、心がないというか、何か違うんだなという感覚があって、それで、魂を入れてみたようなもんかな(笑)。

   ――それから、リアルにファンも増えたようですね。

今まで50~70代くらいのお客さんが多かったんですが、コンサート会場にも20代~30代くらいの若い方が来てくれています。今、ニコ動のコメントなんかでも「こういう曲をカバーしてほしい」っていうコメントが来たりします。やはりというか、昔からのビリー・バンバンのファンはフォーク・昭和歌謡をリクエストしてくれるんですが、新しい人は最近の曲を勧めてくれます。とても有難いですね。

   ――今は「白いブランコ」のセルフカバーだけでなく、ニコニコ動画・youtubeのご自身のチャンネルで松任谷由美さんの「卒業写真」をカバーしたりされています。

今までは自分が作曲した曲を歌うことがほとんどで、自分の世界を作ってきたんだけど、ネットと出会って世界が広がった。 若いころは人の楽曲を歌うのに抵抗もあったんだけど、いいものはどんどん歌っていきたいです。ツイッターやニコ動でのリクエストも見て、カバーアルバムなんかも作ってみようかと考えて、アニソン・ゲーソン系からも曲を選び始めていますので、お楽しみに。
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