大統領vsNY州知事
トランプ大統領は4月16日、「新型コロナウイルスの感染はピークを超えた」とし、感染拡大によって制限されている経済活動を、州ごとに段階的に再開させる指針を発表した。経済活動を再開させるか、どの段階まで再開を認めるかは、各州知事の判断に委ねるとしている。
これに対して、慎重な意見も多い。
とくに状況が深刻なニューヨーク州では、クオモ知事がトランプ氏の発表に先がけて、4月29日までとしていた市民の外出制限を、来月15日まで延長すると明らかにした。
4月13日の記者会見で、経済活動の再開を急ぐトランプ大統領が「自分に完全な権限がある」と主張したのに対し、クオモ知事は「憲法によって多くの権限が州に与えられている」とし、次のように反論した。
"We don't have a king in this country. We didn't want a king. So we have a Constitution and we elect a president.
" 「この国にキングはいない。キングはほしくなかった。だから(王政を避けるために)憲法があり、我々が大統領を選ぶ」
ミネソタ州に住む知人は、「毎日のように行われるトランプの記者会見が、支えになっている人は多いと思う」と話す。
その一方で、カリフォルニア州に住む知人は、「私が信頼している情報は、トランプじゃなくて州知事。指示を守り続けて1か月間、一歩も外に出ていない」と言う。
ニューヨークをはじめ全米で、不安を抱えながらも多くの人は、今日もまた指示を守って家にこもり、コロナ危機が1日も早く収束するのをじっと待っている。(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。