最近、新型コロナウイルス対策のため側面窓を開けて走る通勤電車を見かけるようになった。鉄道ファンだと側面窓が開けられる車両、開けられない車両は分かるが、一般の方は見分け方が難しいだろう。
そもそも、若い方だと電車の窓は開けられないと思っている方も多いように感じる。今回は関西を走る電車を題材に側面窓が開けられる車両、開けられない車両を話していきたい。
一段下降窓が多い関西私鉄
関西私鉄は昔から一段下降窓と呼ばれる側面窓が好きだ。一段下降窓とは下におろせる一枚窓のことを指す。一段下降窓を採用している列車の側面を見ると、長方形の一枚窓がきれいに並んでいるため、すぐに判別できる。
一段下降窓を特に好む鉄道会社として阪急電鉄が挙げられる。阪急電鉄は前身の箕面有馬電気軌道の時代から側面窓に一段下降窓を採用している。戦前、冷房がなかった頃の神戸本線では六甲山地から開け放った窓を通じて涼しい風を入れていたのだろう。阪急の礎を築いた小林一三氏が考えた神戸本線のPR文「眺めの素敵によい涼しい電車」というのは一段下降窓のおかげと言っても過言ではないと思う。
阪急の一段下降窓は車内から開けられ、1989年デビューの8000系は車内にあるボタンを押して窓の開閉操作ができる。
一段下降窓の欠点として、窓の下に水がたまりやすく腐食しやすいことが挙げられる。それでも美しい車体を維持している阪急電鉄のメンテナンス力には感服する。
固定窓が多いJR西日本の電車
一方、通勤型・近郊型電車に開閉できない固定窓を採用してきたのがJR西日本だ。1989年に登場した近郊型電車221系は一部を除き側面窓は固定窓となった。登場時は全ての側面窓が開けられる旧国鉄型電車が幅をきかせていたので、新鮮に映ったものだ。1991年に登場した通勤型電車207系は側面に大きな固定窓を設置した。
一方、近年登場している車両は開閉可能な側面窓を増やしている。大阪環状線のニューフェイスである323系はドア間に開閉可能な側面窓を設置した。
このように、窓ひとつ取っても、鉄道会社の方針や時代によって異なるため実に興味深い。新型コロナウイルスにより、今後の列車の側面窓はどのように変化するのだろうか。
(フリーライター 新田浩之)