新型コロナウイルス対策の一環として、政府が国民1人あたり「一律10万円」支給の方針に急きょ舵を切ったことに対し、一定の評価をする声がテレビの情報番組など各所であがっている。
しかし、公明党が安倍晋三首相を押し切った、との報道も出る形での方針転換に対しては、従来から「一律10万円」を主張しながら聞き入れてもらえていなかった自民若手らの間から「ブチギレてます」といった、政府の姿勢にいらだちを示す声が出ている。
しかも、自民国会議員ツイッターでは、こうした声への賛同も複数寄せられている。長らく「官邸主導」の強さが指摘されてきたなか、くすぶっていた党内の不満が表面化する異例の展開となり始めている。
自民議員から「だよね~!!」「同感」
安倍晋三首相が2020年4月16日、コロナ対策として「1人10万円」給付を新たに打ち出したことを受け、時事通信(ウェブ版17日)は「公明、『連立離脱』論で押し切る 官邸主導の政治手法に影(略)」との見出し記事を配信した。
政府は既に、収入急減世帯などへの30万円給付を盛り込んだ2020年度補正予算案を決定していたが、安倍首相はこれを組み替える指示を出す異例の展開となっていた。15日には、公明党の山口那津男代表が安倍首相と直談判するなど、従来から公明が主張していた「1人10万円」給付の実現を強く求めていた。
「1人10万円」給付の実現を求めていたのは公明だけではなく、たとえば自民党若手の安藤裕衆院議員(当選3回)らも、3月末に出した声明の中で主張していた。
こうした流れを受け、自民の小野田紀美参院議員(当選1回)は4月16日のツイッターで、
「私達自民党の中でも強かった要求が結果として実現し国民のためになるなら、誰の手柄になろうと何でも良い」
と、「1人10万円」給付の実現を歓迎しつつ、続けて、
「と思う気持ちも本当ですが、今回の政府の自民党内の意見に対する扱いと公明に対する扱いの差、ここには正直暴れ出したいくらいブチギレてます」
と不満と怒りをストレートに表現した。趣旨としては、実現したのは喜ばしいが、なぜ「公明の主張を受け入れ」ての実現という形になってしまったのか、自民党内でも自分たちがあれほど強く訴えていたのに――といったことのようだ。
この小野田議員ツイートに対しては、好意的な反応を示す自民議員が複数出た。三原じゅん子参院議員(党女性局長)のツイッターは「だよね~!!」と賛意を示した。また、松川るい参院議員(当選1回)も、小野田議員が、先ほど引用した自身のツイートと近い趣旨の別ユーザーのツイートに対して「ね」と賛成しているツイートに「同感」と応じた。
岸田政調会長もツイート
自民党では、二階俊博幹事長が4月14日、「1人10万円」支給について、所得制限に触れながらも「政府に強力に申し入れたい」と記者団に語っていた。もっともこの動きは、岸田文雄政調会長が3日、安倍首相との会談後に記者団に、大幅収入減少世帯への30万円給付で党と政府が合意したと発表したことに対し二階氏が不満で、こういう重要事項を党として公表するのは岸田氏ではなく自分だ、という鞘当てだといった見方も出るほどで、二階氏の本気度は高くない、ともみられていた。政府は「30万円」策を含む補正予算案を7日に閣議決定していた。
もっとも、「30万円」策を推進していたと目されている岸田氏も16日夜のツイートで、
「(略)皆様の暮らしを守るために、自民党としても当初から訴えてきた10万円一律給付を前倒しで実施することを総理が決断しました(略)」
と紹介している。
岸田氏ツイートは別にして、先の小野田氏ツイートなどは、現状の「官邸主導」への不満が表面化した動きの一つといえそうだ。安藤衆院議員らもこれまで、「10万円一律給付」を強く訴えてきており、12日には「安倍政権のコロナ経済対策、なんと自民若手たちが『批判』を始めた...!」(現代ビジネス、ウェブ版)といった記事も出て、安藤氏の主張を紹介していた。
こうした動きは、従来の「官邸主導」の強さのほころびを示す動きなのか。時事通信は、先に触れた記事で、公明の動きにも注目しつつ、「(略)官邸主導の政治手法が今回ははね返され、首相の求心力低下も印象付けた」と指摘していた。