池袋暴走事故まもなく1年 遺族・松永拓也さんがフルネームを公表した理由

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   2019年4月19日に東京・池袋の路上で自動車が暴走し、母子2人が死亡した事故から1年が経つことを受け、妻と娘を亡くした遺族・松永拓也さんが20年4月16日に動画を公開した。

   これまで松永さんは、名字のみを公表していた。動画では、この1年間で起きた心境の変化や、今回初めてフルネームを公開するに至った理由などを語っている。

  • 池袋暴走事故1年で遺族が動画を公開
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「憎しみ」と「処罰感情」分けられるように

   事故は東京都豊島区東池袋の路上で19年4月19日に発生。横断歩道を渡ろうとした松永真菜さんと莉子さんの母子2人が死亡し、運転していた旧通商産業省工業技術院元院長の飯塚幸三被告と同乗者の妻を含む8人が重軽傷を負った。飯塚氏は19年11月に警視庁から書類送検され、20年2月6日には過失運転致死傷罪で在宅起訴された。

   事故遺族の松永拓也さんは、事故発生後からメディアを通じて「遺族の思い」を伝え続け、19年8月にはJ-CASTニュースの単独取材にも応じている。本来なら事故後1年の節目として会見を開く予定だったというが、新型コロナウイルスの影響により断念。代わりに今回の動画をアップロードした。

   松永さんが動画で口にしたのは、事故当時からの「心境の変化」だった。当初は「加害者に対する憎しみ」が湧く中で、「憎しみに囚われた自分を真菜と莉子は望んでいるだろうか」「憎しみに囚われるのは遺族として当然の感情」と相反する感情を抱き、2ヶ月近く悩んだという。

   しかし、

「ふとした時に『憎しみに囚われている時は加害者のことを考えている時間だ』と思うようになりました。それよりも『妻と娘への感謝の気持ちで心を満たしたい』というふうに考えるようになりました」

   と変化が起きたと語る。その結果、今は「憎しみ」と「処罰感情」を分けて考えられるようになったという。

「被害者にとってメディアは決して攻撃するものではない」

   変わらない思いもある。「誰にもこのような思いはさせたくない」という気持ちだ。動画では「交通事故の犠牲者をひとりでも減らしたい」という願いのもと、事故を知った時の心境、病院で亡き家族と対面した時の思いなどが生々しく語られている。

   松永さんはこれまで一貫してフルネームを公表してこなかったが、今回の動画で初めて名前を明かした。その理由を、

「(1年の)猶予の間に心の準備、戦う準備、交通事故防止への覚悟、たくさんの支援者ができたからだと思っています。特に交通事故防止の活動をしたいという気持ちが強くなったことが一番の要因です」

   と語っている。

   また、当初はマスメディアが強引な取材をする「メディアスクラム」に対して恐怖心や不安を抱いていたというが、「時を追うごとに、被害者にとってメディアは決して攻撃するものではないということがわかり、自分の思いを世に伝えてくれる支援者にもなりうるということがわかりました」とメディアへの向き合い方にも変化があったと振り返る。

被害者遺族が実名を明かすこと

   被害者遺族が実名を明かすことについては、

「犯罪被害のご遺族が実名を公表しないという選択があっても私は間違いだと思いません。自分や家族の生活を守るためにそれが必要な人もいます。実名を出しても出さなくてもいいし、実名を出すのに時間がかかってもいいと思います。実名報道するかどうかも、報道機関とどう付き合うかも、被害者遺族が選べるのだということをみなさまに知っていただきたい」

   と持論を語っている。

   動画の最後には亡くなった家族の動画・写真とともに、

「真菜と莉子は確実に私とともに生きていました。しかし、今はもうこの世にいません。これが交通事故の現実です。どうか、身近な人を愛するように、車の外に向けても、愛のあるやさしい運転をお願いいたします」

   と呼びかけている。

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