新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界中のボクシング興行が延期、中止に追いやられている。2020年3月下旬から5月末までに予定されていたほとんどの国内、地域、世界タイトル戦が消滅した。日本のみならず世界的にボクシング興行の再開のメドが立っておらず、暗いニュースが続くなか、ウイルスの感染拡大の収束を願いつつ延期された世界戦、今後開催されるであろう世界戦に迫ってみた。
「カシメロは素晴らしい体形を保っている」
今年の上半期のボクシングカレンダーで最も注目されていたのは、WBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(27)=大橋=の王座統一戦だろう。WBO世界バンタム級王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)との王座統一戦は4月25日に米ネバダ州ラスベガスで予定されていたが、試合を管轄するネバダ州のアスレチックコミッションの要請により試合は延期となった。
井上は渡米前に試合の延期が決定したため、現在は国内に滞在してコンディション作りに励んでいる。一方のカシメロは、地元紙「フィルスター」によると、最終調整地だった米ラスベガスに現在もチームスタッフとともに滞在しており、現地でトレーニングを積んでいる。プロモーターのショーン・ギボンズ氏は「カシメロは素晴らしい体形を保っている」と話しており、いつ試合が決まってもいいよう調整を続けている。
日本人の世界王者では、WBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人(26)=ワタナベ=の3度目の防衛戦が中止となった。当初、5月9日に大阪府堺市で同級2位アンディカ・ゴールデンボーイ(インドネシア)と対戦を予定していた。京口の場合は、試合が延期ではなく中止のため次戦は未定。京口はWBC同級王者・寺地拳四朗(28)=BMB=との王座統一戦を望んでおり、年内の実現を目指している。
村田は年末にもビッグマッチか
WBA世界ミドル級王者・村田諒太(34)=帝拳=のV2戦は流動的となっている。村田の最終試合は2019年12月のV1戦で、本来ならば今年の5月もしくは6月あたりにV2戦を行う方向だった。村田は最強王者サウル・アルバレス(メキシコ)との対戦を望んでおり、実現に向けて両陣営による交渉が行われたが、対戦日時、ファイトマネーなどで折り合いが付かず合意に至らなかった。
その一方で、アルバレスは5月に対戦を予定していたWBO世界スーパーミドル級王者ビリー・ジョー・サンダース(英国)との一戦が、正式発表を前に消滅。加えてサンダースが、動画撮影した「いかにして女性を殴るか」という趣旨の映像がSNS上で流出したことで、英国コミッションから一時的なライセンス停止処分を受けており、WBOから王座をはく奪される可能性もあり、アルバレスVSサンダース戦の行方は不透明だ。
米国専門メディア「ボクシングシーン」によると、アルバレスは9月にIBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と対戦することで合意に達しているという。村田は年末にもアルバレスとの対戦の可能性を残しており、その前にV2戦を挟むと見られていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、現在、V2戦の時期、対戦相手などは未定となっている。
井岡は王座統一戦、日本人対決に期待が
WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(31)=DANGAN AOKI=の次戦も注目される。スーパーフライ級の他団体王者はタレントが揃っており、WBA王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)、WBC王者負ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)らとの王座統一戦、もしくは世界3階級制覇の田中恒成(24)=畑中=との日本人対決の可能性もあり、いずれにしてもビッグマッチとなりそうだ。
IBF世界スーパーバンタム級暫定王者・岩佐亮佑(30)=セレス=は、正規王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との王座統一戦が義務付けられている。アフマダリエフは1月31日に行われたタイトル戦で王者ダニエル・ローマン(米国)を判定で下し、WBA、IBFの2つの王座を獲得。アフマダリエフVS岩佐戦は、WBAとIBFのベルトがかけられる可能性が高く、岩佐にとってビッグチャンスとなる。
井上、京口、村田...。新型コロナウイルスの感染拡大が収束すれば、日本人の世界王者による防衛戦、王座統一戦が立て続けに開催されるだろう。これに加えて世界王座に挑戦するタイトル戦も次々と開催される見通しだ。海外では世界ヘビー級3団体統一王者アンソニー・ジョシュア(英国)の防衛戦や、日本のボクシングファンの注目度が高いWBC世界バンタム級タイトル戦、ウバーリVSドネアなどが控える。
日本ボクシングコミッション(JBC)と日本プロボクシング協会(JPBA)は、6月以降の興行再開に関して4月22日の協議会で決定する見通しだ。ウイルスの感染が世界に広がるなか、6月以降の興行再開は難しいとの見方があり、先行きは不透明なままだが、多くのボクシングファンは早期の興行再開を願っている。そして、興行が再開されれば、世界的に怒涛の世界戦ラッシュとなるだろう。