宝塚歌劇団は新型コロナウイルスの影響で2020年6月末まで公演を中止し、また公演スケジュールの見直しと、現在発表済の生徒(団員)の退団日・組替えスケジュたからールの変更も決めた。4月9日の発表では、7月以降は「今後の状況を慎重に見極めながら、公演スケジュールの見直しも含めて」検討するとしている。
2月末に最初に公演中止がなされて以降、3月9~11日と22日の再開以外は公演中止が続き、ファンを心配させていた。4月に控える初舞台公演や、トップスターの退団公演といいう一大イベントが控えており、これらが無事上演できるのか、という不安が生じていたためだ。
2度の大震災でも無かった決断
2020年3月以降の宝塚歌劇団の公演スケジュールは、本来であれば4月の月組公演で新たに入団する106期生の初舞台公演があり、また21年初頭までに雪組と月組のトップコンビの退団公演が控えていた。特に初舞台公演とトップ退団公演は最も注目が集まる公演である。2014年に創立100周年を迎えて以後、毎年観客動員数を更新し続けていた劇団にとっても、順調な動員が期待されていた。
トップスターの退団は、近年では退団日の8~10カ月前に発表されるのが通例。当初20年10月11日退団予定だった雪組の望海風斗(のぞみ・ふうと)さん・真彩希帆(まあや・きほ)さんは2月に退団発表があり、21年2月14日退団予定の月組の珠城(たまき)りょうさん・美園(みその)さくらさんも20年3月に退団発表がなされた。なお、どちらの退団日も決まり次第、改めて発表される予定だ。
トップスターのようにスター格の生徒が退団する公演では退団者の集大成となる場面が用意されるなど、出演者とファン双方にとって力のこもったものになる。スケジュールは1年以上前に発表されるもので、本公演に加えて退団者の主演公演が用意されることもある。
反面、1年以上先までスケジュールが決まっているので、公演期間の調整はほとんど例が無い。阪神大震災・東日本大震災が発生した時も発生直後の公演が中止になったが、中止公演の振替公演は開催されなかった。感染症の拡大が止まらない未曽有の事態で、抜本的な公演スケジュール見直しという、前例のない決断がなされた。
数か月~年単位で変更の可能性
6月以降に新型コロナが収束したとして、どのように公演が再開されるだろうか。現実的には、宝塚大劇場・東京宝塚劇場の公演のみならずその他の劇場公演も延期になっているため、初日を迎える前に中止になった花組「はいからさんが通る」(宝塚大劇場)、星組「眩耀の谷/Ray-星の光線-」(東京宝塚劇場)を皮切りに、公演スケジュールをスライドさせていくことが考えられる。以後、宙組・月組・雪組と順に、当初の予定に従って公演を組んでいく。
この場合、月組の初舞台公演も毎年恒例の春から大幅に時期をずらし、20年夏以降の時期の上演となるだろう。雪組と月組のトップコンビ退団公演も、数カ月単位で日程を変更しての上演が濃厚だ。もし一旦収束してから再度感染者が増加した場合も、再度の日程変更がなされて、年単位で退団スケジュールは変わる可能性もある。
他に予定されていた公演、例えば望海さんの退団に先立ってのコンサート「NOW!ZOOM ME!」の開催も現状は不透明だが、これらも収束後に開催できれば劇団とファンともに悔いなく退団を見届けることができる。
ただし、2021年には東京宝塚劇場の施設改修による長期休演も予定されていた上、宝塚大劇場・東京宝塚劇場以外の劇場を借りての公演では、宝塚以外の公演との調整も必要であり、いずれにしても劇団によるスケジュール調整をファンは待つしかない状況にある。
安心感与えた「スケジュール見直し」
6月末までの公演中止が決まり、向こう3カ月弱は一切の舞台が観られなくなったタカラヅカファンだが、劇団への信頼は固い様子だ。2月下旬から小出しに公演中止が相次ぎ、今後の公演がどうなるのかとやきもきしていたところに、退団日の変更が告知されたために胸をなでおろしたファンが多かった。
公演中止が続くと、ツイッターには「愛してるよ宝塚歌劇団」というハッシュタグで、スターや劇団への愛をつぶやくファンが現れ始めた。当初は生徒の健康を気遣うものが多かったが、全公演スケジュールの見直しには、「英断」「万全の状態で退団を見送れるよう配慮してくれた」として劇団に感謝する声が圧倒的だった。
生徒のタカラヅカ人生の集大成であり一大イベントの退団公演を、収束すれば安心して迎えられるという安心感をもたらしたことは大きく、まずは新型コロナの蔓延という非常事態を乗り切り、生徒と共に笑顔で公演を迎えたいという希望を抱いているファンが多いようだ。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)