HKT48が約1年ぶりにリリースする新曲「3-2(さんひくに)」(2020年4月22日発売)では、「なっぴ」こと運上弘菜(うんじょう・ひろな)さん(21)が初めてセンターポジションに起用された。
運上さん曰く「そもそもセンターに選ばれる雰囲気のメンバーではないと思っていた」。そんな運上さんを「なっぴのメンタルは、おれたちが守ろうな!」(1期生の村重杏奈さん=21)と、メンバーが支えながらグループを盛り上げたい考えだ。インタビューの第2回では、新たな「グループの顔」の人となりに迫りながら、センター経験のあるメンバーに、それぞれの「センター論」を語ってもらった。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)
「そもそもセンターに選ばれる雰囲気のメンバーではないと思っていたので...」
―― センターの運上さんにうかがいます。4期生としては初の表題曲のセンター起用です。「早送りカレンダー」(18年発売)から3作連続の「選抜」入りですが、やはりセンターから見える景色は違いますか。
運上: 「全然違う」というか、そもそもセンターに選ばれる雰囲気のメンバーではないと思っていたので、びっくりした気持ちがすごく大きかったです。今までのHKT48とは違う雰囲気の曲でセンターをさせていただいたので、新しいHKT48の魅力を引き出して発信していきたいです。
―― 実際にMVをセンターで撮影してみて、いかがですか。
運上: MV撮影は天気が悪くて、ダンスのところも結構(スケジュールが)バタバタしていて、みんなで「大丈夫かな」と思っていましたが、「寒いけど頑張ろうね」と励まし合いながらダンスできたので、いい作品になっていると思います。
―― 「そもそもセンターに選ばれる雰囲気のメンバーではないと思っていた」とのことでした。確かに17年の「じゃんけん大会」で「笑わないアイドル」がコンセプトのユニットで優勝した際には、優勝会見でも表情を変えずに淡々と話していたのが印象的でした。「日経エンタテインメント! HKT48 Special 2019」(日経BPムック、18年発売)のインタビューでは、「私はずっとステージに立つのも笑うのも苦手で、ファンの方にも目線を送れないし」とも話していました。ここ1年ほどで握手や劇場公演での人気が上昇した運上さんですが、苦手意識は克服できましたか。克服のために、どういったことを心がけてきましたか。
運上: うーん、やっぱり選抜に入ってから、コンサートでもずっと後ろだったのが前で踊れるようになったり歌えるようになったりすることで、ステージに立つ楽しさが少しずつ感じられるようになってきました。今ではステージに対しての苦手意識はありません。でもやっぱり、ステージに立っていてファンの方とアイコンタクトを取ったりというのは、まだ基本苦手で...。良くないんですが、でも、それもファンの方に伝えて、自分のキャラクターを把握してくれて、そこを好きでいてくれるファンの方もいるので...。苦手な部分はまだ完全に取り払われてはいませんが、「これが自分だ」という感じでいます。
―― そういったところを含めて運上さんのキャラクターを受け入れてくださる熱心なファンの方が増えてきたと...。そんな感触ですか?
運上: うーん、増えてきたんですかね~?
田島: そこがなっぴの良さ。「らしさ」として、好きな人が応援してくださっていると思います。
村重: なっぴは「私は内気なんです」という感じの言い方をしますが、割と村重は、なっぴを見ていて「すごく熱いな」と思うことも多いです。なんだかんだ負けず嫌いなのかな、と思う時もあるし、本人は「センターには向いてない」という発言をしますが、村重は一番向いているんじゃないかと思います。
田島: 自分に対してすごくストイックだし...
村重: 今までのHKT48にいないメンバーだと思います。
コンサート寸劇「お前、クソだな!」発言の理由
―― 村重さんは運上さんの芯の強さを、どういった場面で感じましたか。
村重: 例えばMC(公演やコンサートでのトーク部分)で、「話せなくていいや」と思うのではなく「私話せない。どうしよう。どうしたらいいですか?」と相談してくれたりしていました。だから今は「自分のキャラだから」と言っていますが、実はキャラに甘えることなく、結構ストイックに「どうしたらいいんだろう」と考えてくれるタイプの子だなと思うので、これからのHKT48をすごく引っ張ってくれると思います。
―― そうした中で出てきたのが、19年のコンサートツアーの「寸劇戦隊・指(ゆび)レンジャー」で出てきた「お前、クソだな!」という一言なんですね。
運上: いやー。なんですかね...。あれは村重さんがせりふが飛んで、その時に先輩から「『畜生!』って言いなよ」と言われたんですよ。でも「畜生!」だと何か違うな...というか、そのままシーンとなると思ったので、思い切って言ったんですけど...。でも、その「クソが!」というのも、村重さんだから言えたというか...。
村重: 確かに!
運上: 悪い意味ではなくて、受け止めてくれる先輩だったので言えたことでした。ほかの先輩だったら、多分言えていなかったと思います。感謝しています。
―― あの一言は、元々の性格とのギャップもあって、ラジオ番組やコンサートなど、ことあるごとに言わされるようになりました。「毒舌キャラ」といわれることもあるようですが、これはなくしていきたいですか。それとも、引き出しのひとつとして、とっておきたいですか。
運上: うーん、ファンの方が新しい一面を見られたことについては喜んでくれるので、「クソが」まではいきませんが、毒舌というか、ストレートに発言するという気持ちは残しておきたいと思います。
周りのメンバーの支え具合が一番大事
―― 新曲の選抜メンバーが発表された3月7日のSHOWROOMの番組では、村重さんは「なっぴのメンタルは、おれたちが守ろうな!」と繰り返していました。20年1月のコンサートで最初の100分間センターを務めた村重さんから見て、運上さんのパフォーマンスはいかがですか。
村重: 100分しかセンターしていませんが、やっぱり100分でも、すごいプレッシャーが...。もうしんどくて。いつも16番手で後ろにいるメンバーだったので、前で踊ることに慣れてないといいますか。センターって本当に前に誰もいなくて、お客さんしかいないですし、みんなセンターの後ろで踊っているわけですから、「自分がちゃんとしないと」っていう...。セットリストとかはちゃんとしてなかったですけど(編注:後輩メンバーが歌う楽曲では村重さんが次々に仮装して登場し、寸劇の時間も長く取るセットリスト=曲順だった)。
メンバー一同: (笑い声)
村重: でも、普通のアイドルの楽曲の時は「自分が引っ張っていかないと」と、すごく思っちゃったので...。100分しかしていないので恥ずかしいですけど、こんな発言をするのも。でも、やっぱり、すごくしんどかったので。なっぴも若いし、結構後輩の方なので、後輩の子がセンターで先輩メンバーの前で踊るのはすごくプレッシャーだと思うし、しんどいと思うし...。だから「センターに立ってメンタルがやられる」ではありませんが、そういうメンバーを結構見てきたので、なっぴには、ノビノビと、楽しくセンターをやってほしいと思うので、「なっぴのメンタルは、おれたちが守ろうな!」と言いました。周りのメンバーの支え具合が一番大事だと思うんですよ。メンバーが仲間じゃなかったら、メンバーが敵になっちゃったら、すごくやりにくいと思うし、楽しくないと思うから。HKT48らしく仲良く。センターですが、みんなと仲良くするのが一番だと思いました。
―― 「先輩メンバーの前で踊ることのプレッシャー」についての話題が出ました。18年8月に開かれたアイドルイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL」(TIF)では、デビューから4か月しか経っていない渡部さんが「ウインクは3回」でセンターに立ち、話題になりましたね。
渡部: 先輩の中に入って16人のフォーメーションで踊るのはTIFが初めてでした。すごくプレッシャーもあったし、最初は「ここにいていいのかな」とすごく思いましたが、周りの先輩方が優しくて、私が緊張していたら「絶対大丈夫だよ」って隣で言ってくださったのが、自分にとっての支えになりました。
今のHKT48のいいところを見せたいというプレッシャー
―― この席にいらっしゃる皆さんは、シングル曲など様々な場面でセンターを務めたことがありますが、「自分の時は、こうしてセンターをやりきった」「こういったところを運上さんには気を付けてほしい」といったことはありますか?「最高かよ」(16年発売)などでセンターを務めた松岡さん、いかがですか?
松岡: えー?弘菜ちゃんって意外と強いので、心配にはあんまりなりません。でも、たまーに自信を失くしちゃって「私なんか...」という時があります。そこは、顔は可愛いし完璧なので、自信を持って。「後ろには、はなたちがいるから大丈夫だよ」というのは、思っていてほしいです。
―― 田島さんは、デビューシングル「スキ!スキ!スキップ!」(13年発売)のセンターという大役を務めました。
田島: 相当昔のことなのでね~(笑)。私はセンター(について)語ることはないんですけど、あのころとは時代も、周りの環境も違いますし...。支えてあげられる周りのメンバーもたくさん増えていると思うので、みんなが言うようにノビノビしてほしいです。センターにしか分からない感情はあるとは思うので、何かあったら思い出しながらアドバイスするので(笑)。ぜひ、気軽に相談してほしいと思います。
―― 田中さんにうかがいます。前作の「意志」(19年)は、指原莉乃さん(27)卒業後は松岡さんとの事実上のダブルセンターを務めています。「早送りカレンダー」では、同期の矢吹奈子さん(18=IZ*ONE専任活動中)との「なこみく」コンビでダブルセンターでした。
田中: 「早送りカレンダー」のときは隣に奈子がいたので、すごく心強かったです。ダブルセンターと単独センターでは全然違うと思うので、まだ(シングル表題曲で単独センターになる感覚は)分かりません。でも、TDCで第3章センターになったときは(編注:村重さんが100分間にわたってセンターを務めた20年1月のコンサートでは、終盤は「第3章」として田中さんがセンターだった)、ファンの方にとって久々のコンサートで、今のHKT48のいいところを見せたいというプレッシャーはすごかったです。でもやっぱり、前に立てることはすごくありがたかったし、うれしかったので、その時の気持ちを大切に頑張っていました。
―― そういった心意気を運上さんにも引き継いでほしい、ということですね。
田中: はい!
(インタビュー第3回に続く。4月13日掲載予定です)
運上弘菜さん プロフィール
うんじょう・ひろな 1998年生まれ、北海道出身。HKT48 チームKIV所属。16年にHKT48に4期生として加入。17年に行われた「じゃんけん大会」に、3期生の荒巻美咲さんとユニット「fairy w!nk」を組んで出場し、優勝。CDメジャーデビューを果たした。「早送りカレンダー」(18年発売)から3作品連続の選抜入りで、今作品「3−2」では、4期生としては初めてセンターに起用された。18年の総選挙では84位。
田島芽瑠さん プロフィール
たしま・める 2000年生まれ、福岡県出身。HKT48 チームH所属。12年にHKT48に2期生として加入。デビューシングル「スキ!スキ!スキップ!」(13年発売)でセンターを務める。18年の総選挙では26位にランクイン。19年から情報番組「アサデス。」(KBC九州朝日放送)にリポーターとして出演している。趣味は読書で、18年から小説ポータルサイト「小説丸」(小学館)で、コラム「読メル幸せ」を連載している。
田中美久さん プロフィール
たなか・みく 2001年生まれ、熊本県出身。HKT48 チームH所属。13年にHKT48に3期生として加入。同期の矢吹奈子さん(IZ*ONE専任活動中)との「なこみく」コンビとして知られ、11枚目シングル「早送りカレンダー」(18年発売)で、矢吹さんとダブルセンター。「11月のアンクレット」(17年発売)を筆頭に、AKB48のシングル表題曲は計7作品に参加。18年の総選挙で10位にランクインし、上位16人の「選抜」入りした。18年から「熊本2〇19応援大使」を務め、20年1月に初のソロコンサートを開いた。
松岡はなさん プロフィール
まつおか・はな 2000年生まれ、千葉県出身。HKT48 チームTII所属。14年に「バイトAKB」のオーディションに合格し、15年2月まで活動。15年に第2回ドラフト会議で指名されてHKT48に加入。8枚目シングル「最高かよ」(16年発売)、10枚目シングル「キスは待つしかないのでしょうか?」(17年発売)でセンターを務める。「ハイテンション」(16年発売)でAKB48のシングル表題曲に初参加し、「ジワるDAYS」(19年発売)など計7作品に参加。18年の総選挙では66位にランクイン。
村重杏奈さん プロフィール
むらしげ・あんな 1998年生まれ、山口県出身。HKT48 チームKIV所属。11年にHKT48に1期生として加入。母親はロシア出身で、実家ではロシア語も話すバイリンガル。14年から15年にかけてNMB48と兼任。18年の総選挙は不出馬。19年から芸能事務所「TWIN PLANET」に所属。同じ事務所に所属する元AKB48の西野未姫さんと動画チャンネル「俺ら」に出演するほか、「サンデー・ジャポン」(TBS)、「人生が変わる1分間の深イイ話」(日本テレビ)などバラエティー番組にも多数出演。
渡部愛加里さん プロフィール
わたなべ・あかり 2004年生まれ、神奈川県出身。HKT48 チームH所属。18年に行われた第3回ドラフト会議では3チームが渡部さんを指名し、支配人を務めていた指原莉乃さんが抽選で交渉権を獲得してHKT48に加入。18年の総選挙では圏外だった。前作「意志」(19年発売)に続いて2作連続で選抜入り。