「井上選手には欠点が見当たりません」
井上の攻撃力を語る上で欠かせないのが防御技術の高さだ。決してカンだけに頼ることなく、パンチを見極め寸前でかわす。防御技術に優れているからこそ、「危険」な距離に踏み入ってパンチを打つことができ、パンチをもらうことなく相手を倒す。世界トップレベルの防御技術が、井上の攻撃力を後押ししている。
バンタム級は「黄金のバンタム」と呼ばれ、歴代の日本人王者は、ファイティング原田をはじめ、辰吉丈一郎、長谷川穂積、山中慎介らそうそうたるボクサーが名を連ねる。無尽蔵のスタミナを誇った原田、カリスマ的存在の辰吉、世界3階級制覇の長谷川、「神の左」と称された山中。いずれもボクシング史に残る名王者だが、井上は27歳にしてすでに名王者の仲間入りを果たしたようにみえる。
これまで数多くの世界王者を育てた実績を持つ協栄ジムの金平桂一郎会長(54)は井上の実力について「ありきたりな言葉になってしまいますが」と前置きし、「井上選手には欠点が見当たりません。ここがダメというところがない。こういう選手は当分、出てこないでしょう」と語った。